607: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/02/12(月) 14:53:53.37 ID:zhSyHYbEO
【魔王城 玉座】
魔王「――ほう。“この腕のかわりに竜王の死罪を取り消せ”と。そう申すのか」
ベビードラゴン「……」コクリ
大臣「開口一番で要求とはなんたる無礼な!」
魔王「……よい」スッ
大臣「魔王様⁉︎ 絶対王が一度下命したものを取り消すなどど!」
魔王「そう早合点するな。取り消すとの意味ではない。ベビードラゴンよ、ちと気を急いたのではないか?」
ベビードラゴン「オラの望みは魔王様であればこそ、最初から見当がついてるはずだなす。先にご提案したまで」
魔王「慕う王と、一族の地位、そのどちらも守れる。たしかにな」
ベビードラゴン「バカなのは恥ずべきことかもしんね。けど、オラは頭良くねぇのわかってるから」
魔王「“札(カード)”を最初から切ったわけか」
ベビードラゴン「本来なら魔王様から褒美を与えると言われるまで待たなきゃ失礼にあたるのは、オラでもわかります」
魔王「ふぅん……勇者の強さ。それに打ち勝つのは並大抵のことではなかったはず。……お前は無傷のまま綺麗な体をしているな? なぜだ?」
ベビードラゴン「おそらく、勇者はまだ本気ではなかったと思うのだす」
魔王「ならば、あえて剣を差し出しされたと、そういうことか?」
ベビードラゴン「いんや。そうじゃねぇだなす。あれが対峙した時の本気だったとも思うだなす」
大臣「魔王様にむかって適当なことを申すでない!」
ベビードラゴン「オラは忠義をもって包み隠さず報告しているだけだなす」
魔王「虚偽の発言ではないとすれば、どういう意味だ?」
ベビードラゴン「“覇気がなかった”そう思うだす。やる気がないといった方が正しいかもしんね」
魔王「なに……? 勇者のやる気が……? わざと負けようとしたのではないか?」
ベビードラゴン「わざとにしても、腕を噛みちぎられる人間なんているはずがないだなす」
大臣「うむぅ」
ベビードラゴン「恐れながら申し上げさせていただきますと――」
魔王「なんだ? かまわんから続けろ」
ベビードラゴン「勇者は、勇者であることを嫌がっていただなす」
大臣「なにを言うかと思えば……バカバカしい」
748Res/717.30 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20