484: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/02/04(日) 20:08:21.87 ID:S3D9Cw+YO
【クィーンズベル城 姫の部屋】
メイド「……はぁっ……はぁっ、お、お嬢様」ガチャ
姫「わたくしの専属メイド様じゃございませんの。いいご身分ですわね、仕事を放棄していったいどこを……」ポト
メイド「……息を、乱してしまい、失礼いたしました……」
姫「貴女……そのマントは? そんなにメイド服を汚して、なにがあったんですの?」
メイド「姫さま、教えてくださいまし。ハーケマルの使者の正体について」
姫「まずは着替えて――」
メイド「お願いします、姫さま! わたし、とんでもない勘違いをしていたんじゃないかと……盗賊団の仲間かと思ってて、気が気じゃないんです……」ポロポロ
姫「盗賊団……?」
メイド「……もしや、もしや、あの方は、勇者さま……なのでは?」
姫「……そうですわよ」
メイド「や、やはり……そんな、どうして」ペタリ
姫「勇者も見かけなくなりましたけど、なにがあったの……盗賊団と間違えてたってなに?」
メイド「あ、謝らなければ。で、でも、盗賊団と一緒にどこへ」
姫「落ち着いて。順を追って説明なさい」
メイド「いえ、姫さまを巻き込むわけには……」
姫「余計な心配です。貴女はわたくしの従者なんですよ。主人に秘密を持つとはなんたることですか。裏切り行為です」ギロッ
メイド「す、すみません」シュン
姫「それとも、話せないほどわたくしは頼りない?」
メイド「いえ! そんな!」ブンブン
姫「ならば、申してみよ。一国の姫として命ずる」
メイド「……っ!」ギュゥ
姫「……」ジー
メイド「ふぅ〜、わかりました、姫さま。告白せねばならぬことがございます」
姫「……申せ」
メイド「実は……弟が、盗賊団を名乗る者に拐われ拉致されました……」
姫「なんですって? 城外にメイドの母と二人で暮らしているという。たまに遊びにきてたわよね」
メイド「ご存知の通り、私の母は、飲んだくれの父に先立たれてから床に伏せております。どうしようもない父でしたが、母には、心の拠り所だったようで」
姫「ええ」
メイド「給金が酒代に消えていたのはお嬢様も薄々感づいておられたのでしょう?」
姫「……」コクリ
メイド「父が不摂生な生活がたたり亡くなってからは、幼い弟が母の身の回りの面倒を見ていたのです」
姫「それもわかっておりました」
メイド「ちょうど二週間ほど前のことでした。城で従事している衛兵に呼び止められ、“弟を拉致した”……そう告げられたのは」
姫「衛兵が……?」
メイド「はい。私にとっては、晴天の霹靂(せいてんのへきれき)でした。父と母を忌み嫌っている私は、弟しか、家族と呼べる者がいないのですっ」ポロ
姫「それで……?」
メイド「うっ、ぐすっ、そ、それから、私は、あろうことか、お城の内部情報をっ、盗賊に流すようになりましたっ」
姫「……」
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