337: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/01/23(火) 14:43:42.95 ID:1oCodxxaO
【クィーズベル城 姫の個室】
メイド「姫様。もっとお腹にお力を。息をめいっぱい吸いこんでくださいまし」ギュ ギュ
姫「……はぁ」
メイド「吐いてはコルセットが……縁談の件で心を悩ませておいでなのですか?」
姫「そうですの。ねぇ、貴女は恋をしたことはある?」
メイド「いえ。私は王宮に、そして姫様に仕える身として従事させていただければ本望でございます」
姫「楽しいんですの? そんな人生が」
メイド「私にとっては全てでございます。……お悩みは、同じ女としてお察しします」
姫「お父様もお母様もひどいんですの。まるで、私に心を殺して生きる人形になれとおっしゃっているかのよう」
メイド「国王両陛下もお苦しいのだと思われます。一人娘です。決してそのような――」
姫「そんなの! 私は望んでいないんですのっ!!」
メイド「ひ、姫様……?」
姫「わたくしは恋をしたい! もっと一人でいたい! 結婚して妻になれば民は安心する⁉︎ 私はどうなるんですの⁉︎ 幸せは⁉︎」
メイド「……」
姫「いやです。会ったこともない人の妻になるなんて……うっ」ポロ ポロ
メイド「泣くのはおやめください。ハンカチです」スッ
姫「うっ」
メイド「覚えていらっしゃいますか。姫様は昔、泣き虫でした。そのたびに私がこうしてハンカチを差し出してましたね」
姫「忘れたんですの、そんな昔の話」グスッ
メイド「ふふ。私は全て覚えております。……姫様、強くおなりください」
姫「……」
メイド「この国は王子が生まれませんでした。子を授かる、それ自体は誰しも責められぬこと。一部の者は妃様の陰口を叩いておりますが、王様の人望が黙らせております」
姫「ええ、知っています」
メイド「この国の未来は、貴女様にかかっているのでございます。民たちの笑顔をさせることも、がっかりさせることも」
姫「……貴女まで、そんなこと……」
メイド「姫様だからこそです。お立場と向き合うというのならば、私はこれからも、いいえ、死ぬまで片時もお側から離れません。おこがましい申し出ですが、辛さを分け合えたらとさえ思っています」
姫「……」
メイド「男など、手のひらで転がしてやればよいのです。お妃様のように、王様に惚れさせて」
姫「惚れ、させる……」
メイド「必ずや、姫様にはその器量があると信じております」
姫「うぅ〜ん」
メイド「まずは、会うだけ会ってみましょう。それから判断しても遅くはございませんよ。……ね?」
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