2: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:44:52.20 ID:6rZ5mY140
第1話「天使のお告げ」
現実は小説より奇なり。
そんなわけがない。
奇跡なんて軽々しく起きるはずがない。
でも今日は、学校帰りの今日は、ちょっと違うらしい。
ラッキーくじを引いたのか、アンラッキー地獄くじを引いたのか今の俺には見当がつかない。
なぜか俺には彼女がいるのに、別の女性の部屋にいるなんて。
丹生谷「入っていいわよ」
丹生谷の部屋の扉レバーを引くと、以前の部屋とは違っておしゃれなピンク一色の配色が多い部屋になっており、クマのぬいぐるみですらピンク色であるため随分TVで見た女のイメージらしい部屋に変化していた。しかも机の隅に手のひらサイズでインテリア用の電子キャンドルが小さくも強い黄緑色の光を放ち、また光るとキャンドルの中の∪模様もこれまたかわいくにじみ浮かぶのが見える。ずいぶんお洒落な部屋カラーだ。実際に見るとこんな現実あるんだなと感心する。
と思いきや?
何だこの段ボールの山は!!!お前引っ越しでもするのかよ!!!!
目の前に多数の雑誌が入った段ボールかける7つの箱が超高層ビルを建設している。丹生谷ともうお別れか元気でな、と思うが雑誌の中に恋愛関係の本で溜まっているのだ。
俺には彼女の、彼女がいるって自分で言うなんて恥ずかしいな。自分で思って自分で羞恥を感じるとはまた高度なプレイである。俺には世界で一番かわいいと思える彼女の、六花がいる。
実は昨日丹生谷から電話がかかってきて、甘えた声で「富樫くん、相談したいことがあるの。皆には内緒だよ♡」と言ってきて、六花がいるのにもしかしたらもしかしてと淡い期待を心の風船に膨らませた俺は、段ボールの中身と、まるでエサの罠にはまって動けなくなった動物を見る猟師のような丹生谷のにやけた不気味なスマイルで粉砕される。
丹生谷「どうぞお茶」
俺が何されるか不明で緊張のあまり正座すると「分かってるんでしょ」と暗い声で言われ、丹生谷はニコニコ顔のままお茶の入ったおぼんを床に叩きつける!おぼんがお茶でびちょぬれになる。俺の幸せな快楽物質は直ちに死に、内心ガクブルで心臓が一瞬停止する。
丹生谷「あんたいつキスすんのー!いい加減しなさいよゲルゾニ!」
足であんたの頭を踏みつけるわよ!と急に脅迫されたため、やばい!と思い俺は幼いサルのように両耳を伏せる。だが、まるで戦利品としてもらってきたかわいい木馬の中からアカイア軍が突然出てきて逃げ回るトロイア市民のように、俺は体が震えて縮こまり動かなくなったがそんなのを省みない非情な神経をしている丹生谷は女性と思えない力強い手で俺の左手をもぎ取り、最近どうなのよ!の声を脳内に共鳴させた。
丹生谷は俺の目に浮かぶ涙を察するとさすがにかわいそうだとおもったのか俺の場から離れる。実はこれ演技である。俺の幼稚園児みたいに体を縮こませ母性をくすぐる戦法にまんまと騙されるなんて愚かだなははは。わずかながらの兵力を託した富樫軍を結集し、間抜けな丹生谷女王を剣で斬る。
勇太「いきなりなんだよ!電話で相談があるから俺も力になりたいと思ってきたのに!」
丹生谷「小鳥遊さんが」
勇太「ん?」
丹生谷「富樫くん、あのね時間は有限だってこと分かる?今11月だしもうすぐ3月になるの。受験で1年間デートする暇がなくなるの」
なんか説教が始まったぞ。しかし内容が不明なので理解に好奇心が出る。だんだん落ちついたトーンで諭すように話しかけるので仕返ししてやろう戦闘意欲も次第に失せ、やけに俺の人生なのに考えてくれるんだなと尊敬する気持ちが温泉のように少し熱く湧いた。この人訳があって怒ったのかもしれない。
丹生谷「でね、あんたは小鳥遊さんのことどう思ってるの?いつファーストキスするの?ほっぺにチュウは聞いたけど」
そんなこと関係ないだろプライバシーポリシーに違反しているぞさっさと死ね。
勇太「できれば、ドラマみたいじゃないか?3年の高校卒業間際に、なんだかんだで関係の結露が実って桜の木の下とかで告白してゴールインみたいな……。かっこいいなー、なんて」
俺も可愛い♡と思うその発想力に、丹生谷は声を鈍器で殺したかのような口調で、は?と言い、俺を人間扱いしないサイコパスな真顔で見つめる。え、なんでこうなるんだよ?
丹生谷「はあ……。これだから中二病は嫌なのよ。なんとかなるーってなんとかしないとならないじゃん。知らなかったの?まあ、ゲルゾニだしねバカだから仕方ない。しかも受け身だし。そこは諦めるわごめんなさい。じゃあね、じゃあね富樫君大学に行く?働くの?それとも小鳥遊さんのイクメンになるの?」
何でさっきお盆たたきつけてと思ったら俺のこと将来まで介入したがるんだようざいよ。心の中で小石を蹴る。あの丹生谷はよく人の心に入りたがるデリカシーのない奴って知ってるけど今日は極めつけだ。甘い言葉に騙されて浮かれていた俺がバカだったよー!誰がこんな奴に答えるか!さっさと帰る!と憤慨する。でも言われればなんとなく不安がなかったというわけでもない。
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