9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:58:01.33 ID:bbgcA4Fi0
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交わした言葉は十分じゃなくて、それでも時間は流れていく。それを仕方のないことだと考える者もいれば、どうにかしたいと思う者もいた。
そして、全員が自分なりの最善を尽くしながら、最初のレッスンからさらに二度レッスンが重ねられた。
10: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:59:58.74 ID:bbgcA4Fi0
「……! わたくし、コロちゃんを追いかけてきますわ!」
「……ぇ、あ、はいっ。お願いします」
言い争いの間はあたふたして止めに入ることができず、いざロコが飛び出してしまっても、呆然として千鶴に任せることになってしまう。また何もできなかったな、と雪歩は口惜しさに手のひらをぎゅっと握った。
11: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:01:36.88 ID:bbgcA4Fi0
劇場の廊下は部屋の中ほど暖房が強くないから、厚着とも言えないレッスン着だと少し肌寒い。小走りで控え室に向かう途中、遠くから千鶴がロコを呼ぶ声が聞こえた。
もしかして、まだ見つかっていないのだろうか。手伝いに行こうかとも考えたけど、今更自分一人が加わったところであまり役には立てないだろうと思い直す。
目当ての部屋にたどり着いて、最近出番が多くなってきたお茶道具を引っ張り出した。みんなが各々好きに持ち寄った道具を所狭しと収納した部屋の中で、よく使われるものはそこまで入り組んだところに行ってしまわない傾向にある。冬のお茶道具やコーヒーメーカーは、その代表例と言ってもいいだろう。
お茶をいれることにしたのは、温かい飲み物があればもっと落ち着けるはず、なんて月並みな考えから。湯のみの数に少し迷ったけど、ちゃんと必要になりますように、とほんの小さな願掛けを込めて四人分のお茶を用意することにした。
12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:02:31.72 ID:bbgcA4Fi0
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「コンセプトはやっぱり悪くないはず。でもモチーフをプラスするとなるとアイディアがまだ足りないし、それに何より時間が……」
13: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:03:07.93 ID:bbgcA4Fi0
「ねえ、コロちゃん。ひとつ聞いてもいいかしら?」
「いいですよ、チヅル」
ロコの悩みを吹き飛ばすために必要な質問がすぐに思い浮かぶことはなかった。だから、まずはずっと気になっていたことを率直に聞いてみることにする。
14: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:03:37.89 ID:bbgcA4Fi0
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口に出して伝える言葉を信じてみることにしたの。
だから、今は――
15: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:04:11.73 ID:bbgcA4Fi0
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「あれ、ここにあったビデオカメラ、どこにいっちゃったのかな……?」
16: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:04:50.98 ID:bbgcA4Fi0
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「結構な量になってしまいましたわね……雪歩ちゃん、重くないかしら?」
17: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:05:49.40 ID:bbgcA4Fi0
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「お帰り、雪歩さん。話はできた?」
18: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:07:32.34 ID:bbgcA4Fi0
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何が重なったのか、ひどく頑なに口を閉ざされたものだと桃子は思う。胸を張って未来を語っていた時の活き活きとした姿は、もう振る舞いにしか残っていないように見えた。
悩んで、もやもやして、でも打ち明けようとすることもできなくて……それなら何でもないように見せた方がずっと良いから、普段の自分を演じている。こと演じることについては一家言もっている桃子にとって、そういう様子はむしろ異変を浮き彫りにして見せているようで気持ち悪かった。
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