588: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/08/14(火) 23:03:01.33 ID:7P9UOiPr0
大隈二曹からの問いかけにはふざけて答えたが、実際その光景は私もしっかりと眼にしている。
刀や槍、薙刀やハルバード、諸刃剣、変わり種のところではモーニングスター……時代錯誤も甚だしい形状の漆黒の武器が振るわれる度に、深海棲艦の装甲が砕け、肉が裂け、断末魔の合唱と共に屍体が増えていく様子を。
(………なんていうか、滅茶苦茶な光景だったわね)
白兵装備の存在自体には驚かない。天龍や龍田、改装前の叢雲等デフォルトで近接戦闘用の武器を持っている艦娘がいることは私も知っているし、海自の方でもその点に着目し護身用のナイフ程度は全艦娘に配備するべきではないかという意見が出ていると聞く。
実際に戦場で使用され撃沈に至った事例も、指折り数えられるほど少数かつ不明瞭な内容だが無くはない。材質についても、戦車道の特殊カーボンやAPFSDSに使われる合金など候補は2、3思い浮かぶ。
(そう、存在自体は別に不思議でも何でも無い。
問題は、彼女たちがそれを“主兵装”として扱っていた点)
実戦経験は今日が初めてでも、かつて名門戦車道家元の教えを受け入隊後は軍事組織の一員として何年も訓練を重ねてきた身だ。彼女たちの動きがいかに洗練されているかも理解出来ないなら私は自衛隊から去るべき人間だろう。
太刀筋の力強さ、踏み込みの速度、斬撃や刺突の軌道の正確さ。どれを取っても、一朝一夕では身につかない。何百回も何千回も繰り返し、修練し、身体に染みついた類いのもの。
本来艦娘たちもまた、深海棲艦と対を成す形で“生ける軍艦”としての力を持つ存在。その本分は、艦砲射撃や航空爆撃によるアウトレンジからの遠距離攻撃だ。巡洋艦や駆逐艦による雷撃戦にしても、肉薄する距離などたかが知れている。
だが目の前の彼女たちは、その本分とは逆行する近接戦闘を軽々と熟して見せた。
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