534: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/07/13(金) 23:10:49.36 ID:s0ujgYNM0
奴らと接敵してからイ級の頭部が瓦割りされるまで、恐らく一分程度しか経っていないだろう。だけどその60秒前後で、敵艦隊は私達マッスル鎮守府の“番犬”の実力を正確に理解したらしい。
『ォオオオ……ギィッ!!』
『アァアアアア……』
「ははっ」
イ級の屍から飛び降りた時雨を半円形の陣を組んで取り巻きつつ、ホ級flagship達は口々に警戒の唸りを漏らして身構える。明らかに気圧されているその動きを見て、時雨は嘲笑と共に敵に向かって中指を突き立てた。
「揃いも揃ってクトゥルフ神話の怪物みたいにおどろおどろしい外見してるくせに、ちょっとやられたぐらいでこんな美少女相手にビビっちゃうんだ。ホントクソ雑魚だよね、やめたら?深海棲艦」
(………うわぁ)
流石は、邪神の申し子(命名:某海軍少尉)。或いは、口先から生まれたケルベロス(命名:Y.N海上自衛隊一等海曹)。深海棲艦相手でも煽りを忘れない絶口調ぶりには感心せざるを得ない。
『『『………ッ!!!』』』
非ヒト型の深海棲艦でも人語を解するかどうかについては、“海軍”所属の研究者達の間でも意見が分かれていると聞く。だがもし時雨の言葉を理解できなかったとしても、表情や動作を見れば自分たちが彼女に侮辱されていることは容易に推察できるだろう。
『『『グガァアアアアアアアッ!!!!』』』
いつも無機質な奴らの鳴き声が、卵焼きを作るために油をひいたフライパンのように熱を帯びた。恐れや怯みが消え、変わって怒り────人類や艦娘全体に対するものではなく、目の前の駆逐艦・時雨という存在それ自体に向けられた怒りが露わになる。
『ア゛ア゛ア゛ッ!!!』
『『『ォアアアアアッ!!!!』』』
ホ級flagshipの咆哮と突貫を合図として、残りの随伴艦達も闘争心に満ちた絶叫と共にたった一隻の駆逐艦に殺到する。元の知能が低い故に、彼我の実力差の事など挑発一つで脳裏から消えてしまったようだ。
『────ギ、ァッ……!?』
「……えっ?」
そして、時雨以外の“敵”がこの場に存在するということも。
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