473: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/06/27(水) 23:36:07.54 ID:7h7NQTE30
「なっ……」
ノハメ;゚听)「一尉、正気ッスか!?」
戦闘の真っ最中───それも、全滅間際の悪あがきに近い悪戦苦闘の中で、銃撃の手を止めるような愚は流石に誰も犯さない。それでも、私の言葉を聞いた隊員達は口々に驚愕と怒りが入り交じった声を上げる。
「蝶野一尉、状況を解っておられますか!?このシーサイドステーションどころか、既に町全体でどれほど甚大な損害が……」
「私達がこの防衛線を放棄すれば、犠牲になる人命はこんなものの比ではなくなるわ!!!」
一人が更に反駁の言葉を重ねようとしたのを遮り、砲声に負けぬよう、一人でも多くの隊員に伝わるよう、腹の底から叫ぶ。脱出後此方に合流しにきた2号車クルーの三人を始め、戦闘中の何人かの隊員の肩がぴくりと揺れたのを私は確かに見た。
「私達の背後には、ほんの十数キロ先には、市街地の住人が今なお避難中なのよ!?この町が落ちれば、その人達が空襲だけじゃなくて本格的な艦砲射撃の危機にさらされることになる!どころか、その更に先の町や市にだって空襲が行われるかも知れない!私達自衛隊は国民の盾よ、その役目を捨てる行為だけは絶対に許可できない!」
「し、しかし……現にこの戦況の打開は……!」
「まだ作戦は潰えていないわ、逆転への目は残されている」
決して、口から出任せの完全な嘘ではない。
実際北でも南でも、時折、深海棲艦側に向かって放たれる反撃の砲火が見ることができた。陸地に殺到する何百、何千という火線とは比べるべくもない量であることは違いないけれど、それは少なくとも未だ幾らかの友軍部隊・拠点が戦闘を継続しているという証拠でもある。
それらの戦力を糾合し、陸では鈍重な深海棲艦を逆に各個撃破する───即ち、当初私が描いた作戦は、まだ実行に移せるだけの余地を残している。
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