エンド・オブ・オオアライのようです
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423: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/21(月) 23:03:12.26 ID:9CD0GS6L0
CPの無線通信を遮る形で、潮風に乗ってそれらの“音”は聞こえた。

錆び付いた金属の板に爪を立てて渾身の力で引っ掻いているような、耳障りでおぞましい“咆哮”。全身の肌が思わず粟立ってしまう響きのそれが、何十も重なって業火で熱された大洗町の空気を揺るがす。

間髪を入れず、砲声。大洗女子学園の甲板上から響いているものよりやや軽い………だけど、遥かに近くで立て続けに響いたそれらの後に、何十発もの砲弾が私たちの頭上を駆け抜けていく。

《クソッ……!》

“次の手”が読めていたとしても、対処が間に合わなければ意味がない。防げなかった最悪の事態に、大洗鎮守府のオペレーターが低く呻いた。

《大洗鎮守府司令室よりCP並びに各隊に通達、港湾部十数箇所にて深海棲艦の上陸を確認!戦力規模は現在確認中、なお現時点で駆逐イ級、ハ級のフラグシップ種を各4隻確認!》

《軽巡神通、水偵より敵艦隊を視認!鎮守府情報に補足、大洗サンビーチ方面に上陸した敵艦隊に重巡リ級と思われる艦影アリ!》

《こちら涸沼川防衛線、敵艦砲射撃がここまで届いた!損害発生、状況としてはLAV大破1、中破3、喪失2、迫撃砲喪失4!!》

《敵艦隊の一部戦力は湾内よりひたちなか市沖方面へ北上を開始、至急迎撃の要ありと認む!》

《CPより大洗鎮守府、海上迎撃は可能か!?》

《こちら司令室、当鎮守府には現在敵航空隊・艦隊共に多数が殺到している!迎撃戦力は抽出できない、オクレ!》

《大洗町公園方面にも敵艦隊上陸!尚、当該方面の警備府は既に沈黙、艦娘並びに随伴部隊も離脱済み也!》

「そんな……なんで……」

深海棲艦の動向に関する情報が飛び交う中、私の足下でも絶望に濡れた声が上がる。
ちらりと車内を覗き見れば、操縦士の子が頭を抱えて縮こまり、小刻みに震えていた。

「学園艦だけじゃないなんて……どうやって湾内にこんな数……私達だけじゃ対処できるわけ───痛っ!?」

「中内二曹、今は余計なことに思考を割かずに作戦行動に集中!」

「はっ、はぃいい!」

操縦士……中内二曹の背中を蹴っ飛ばして我に返らせる。少々手荒だが、戦車の“足”を担う人間が恐慌で行動不能になれば最新鋭戦車もただの棺桶になり下がる以上手心を加えるわけにもいかない。

「ダスターは引き続き対空射撃を継続!撃墜ではなく空襲の妨害に重きを置いてちょうだい!

2号車、“対艦”戦闘用意!水平射撃態勢、弾薬は撤甲!敵は手強いわ、気合いを入れなさい!」

《ダスター、了解。とはいえ弾薬はあまり保たないぞ!》

《2号車了解!》

M42とヒトマルに無線で指示を飛ばしつつ、随伴歩兵隊にもハンドサインで同時に合図を送る。私の意図をくみ取った周囲の陸士が残存戦力で陣形を組み直していき、また屋内からも新たな部隊が走り出る。

89式小銃、84mm無反動砲、110mm個人携帯対戦車弾、M240B機関銃、60mm迫撃砲………この拠点に現時点で集まっていた、ほぼ全ての火砲・銃火器がそれを操作する人員と共に路上に展開されていく。

それら無数の火線がにらみ据える先は、ほんの数百メートル先でゆらゆらと漁船が……厳密に言うと漁船“だったもの”が多数浮かぶ大洗湾の海面だ。


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