395: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/04/05(木) 23:49:55.86 ID:+56SXZBW0
つい十数秒前までは、形状の判別どころかただの黒点に過ぎなかった機影。それが今や、某SF大作映画の宇宙戦闘機として出てきても違和感がない先鋭的な機体のフォルムが微かながら判別できるほどの距離まで踏み込まれている。
それも、ほぼ…というより、全くの無傷で。
『『『────……』』』
周囲を満たす銃声と──強ち比喩表現ではなく──空を覆い尽くす【カブトガニ】の飛翔音に紛れ、小さく、だが間違いなく聞こえてきた何かが外れるような金属音。私は、全身の血が大波が来る直前の潮の如く引いていくのを感じた。
「敵機投弾!!」
ほんの数百メートルまで肉薄していた敵の先鋒部隊が、次々と空に向かって機首を返す。同時に、響くのは“ジェリコのラッパ”とはまた質が異なる甲高い風切り音。
「衝撃に備えて!!」
咄嗟に叫ぶが、意味のない注意喚起であることは私自身がよく知っている。直撃弾を受ければどうしようが木っ端微塵になるしかないのに、何に備えろというのか。
カツンッ。さっきと同様に乾いた音を残して、落下してきた何十発もの小さな爆弾が路上に跳ねる。次の瞬間そこかしこで光が脹れあがり、轟音と共に炸裂した。
乗っていたヒトマルの車体が一瞬宙に浮き、頭上からぱらぱらとコンクリートの破片が降り注ぐ。吹き付けてきた爆風の熱が、ちりちりと顔や手の甲の皮膚を炙る。
「……っ、損害を────」
爆光が収まり、ようやく顔を上げる。無線への叫びは、左手に視界が移ったところで途切れる。
そこには、業火に焼かれ酷く拉げたヒトマルの3号車が横倒しになっていた。
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