34: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/01/06(土) 01:00:29.26 ID:Gd5bPsEi0
生徒達の多くも、やはり保安隊と深海棲艦の間に横たわる力の差は解っているのだろう。幾らか恐慌は治まったように見えるが、それでも一刻も早くこの場から離れようと大半の生徒は第2グラウンドの方へ駆けていく。
だが、その行動を“全員”が取ったわけではなかった。
「………!お父さん、お母さんが!!」
「優花里さんダメ!!」
「こっちは通れない、戻りなさい!死にたいのか!」
「だって、だって妹が居住区に!」
「お願いです、おばあちゃんの無事を確認させて下さい!」
「通して、通してよぉ!ママ、ママぁ!!」
真っ青になって学園の外に向かって走り出した秋山さんを、背後から西住さんが抱き留める。他のあちこちでも、警官や教員に制止されながらも正門から出ようとする生徒が何人も居た。
深海棲艦の内1体が現れたのは“居住区のど真ん中”───相当数の生徒の家族が住まい、生活を送っている場所だ。秋山さんの両親が経営している理髪店もここにある。
街の惨状を、更にいえば深海棲艦の背後で燃え盛る商業区の有様を目にし、自分たちだけではなく“自分たちの家族”が置かれた危機に気づき、彼女達の理性は跡形も無く吹き飛ばされていた。
「西住殿、離して下さい!家に、私の家族のところに行かせて下さい!!!」
「お願い………落ち着いて優花里さん!」
(;^ω^)「秋山さん、気を確かに持てお!」
「グデーリアン、冷静になれ!頼むから行くな!!」
装填手としての怪力を遺憾なく発揮して今まさに西住さんの手を振り切ろうとしていた秋山さんを、僕と松本さんも加わって何とか押さえる。
「離して、離して……お父さん……お母さん………っ!やだっ、やだぁ!!」
3vs1、しかも内1名成人男性という状況でも、秋山さんは抜け出そうと更に激しくもがき続ける。
『オァアアアアアアアアアッ!!!!!』
潤む彼女の視線の先で、深海棲艦はみたび咆哮し────そして、家々を突き崩しつつゆっくりと此方へ進撃を開始した。
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