30: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/01/05(金) 23:25:36.65 ID:dCQGlBda0
「痛っ、痛い!?やだ、押さないでよぉ!!」
「……“人海”とはよく言ったものだ、溺れそうになる……!」
「麻子さん、優花里さん、大丈夫ですか!?」
「ご心配なく、私達はなんとか!」
「こ、コミケ並みの人込みは筋力つけてもつらい……」
「バレー部、アリクイさんチームとウサギさんチームを守れ!!根性だ!!」
「「「了解!!」」」
西住さんたち戦車道履修組は、やはりこの中では一番組織的に「避難」ができている。だが、いかんせん校舎内が丸ごと狂乱状態という現状に翻弄されていて、ともすればバラバラになりかねない隊列をかろうじて維持している。
(;^ω^)「指定避難場所は第2グラウンドだお!皆、そっちに向かえお!!」
「……ダメだねブーン先生、これ、私ら意外で話聞ける余裕持ってる生徒いないや」
「桃ちゃん、放送はいいから早く武部さん連れて下に───もう、なんで通じてくれないの………!」
いつもの飄々とした様子は吹き飛び、険しい声色で呟く角谷さん。その横では、スマートフォンを操作していた小山さんが真っ青な表情で肩を落とす。
二度目の廃校宣告が突きつけられた時ですら、二人がこんな表情を見せたことはなかった。そしてそれは、きっと今の僕にも共通する表情の筈だ。
(;^ω^)(………学園艦に深海棲艦が現れたってのもマズいけど、それ以上に不安なのが「J-ALERT」は“別の個体”の出現に対するものだって事だお)
届かないと知りながらそれでも喉をからして叫びつつ、僕の脳裏に過ぎるのはJ-ALERT直後に流れていたニュース速報。
フィリピン海に現れたという新型の深海棲艦。航空戦力を保持するとはいえ、日本本州到達まであとほぼ一日分の猶予があるにも関わらず出された大々的な緊急避難勧告。それは当然、学園艦に対して極めて深刻な脅威になる。
混乱の渦中にある大洗女子学園は、尚更に。
(;^ω^)(蝶野教官が、それが無理でもせめて交代人員が居てくれれば……っ!)
無い物ねだりが無駄と解っていても、そう思わずにはいられない。
粗野な言動ながら自衛官として確かな規律と腕を持っていた蝶野一等陸尉は、インド派兵こそ部隊再編の流れで先送りとなったが原隊復帰に伴って退艦済。代わりの教官となる二等陸尉は、明後日の赴任予定はずだった。
現役の自衛官による避難誘導があれば、どれほど混乱を避けることが出来ただろうか。
教師として生徒を守らなければいけない立場にありながら、混乱を一向に収拾できず他人に頼るしかない自分の無力さがひどくもどかしい。
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