288: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/02/15(木) 21:34:24.68 ID:N8TNLwGU0
深海棲艦が甲板上に、それも複数体出現するという前代未聞の異常事態。更に外洋から“新型”や別艦隊が接近している点も併せて考えれば、政府や自衛隊が此方の情報も隠すことは自然ではある。
問題は、それがC.R.Rの投入や艦娘の動員状況以上に重要視されているという点だ。
「まだ、情報収集の開始からたったの2時間しか経っていないという面は確かにあるわ。でも、逆に言うとこの2時間大洗女子学園艦内に関する情報にはアッサム達がノンストップでアプローチを続けている。
それなのに、テレビ局が報道している以上の内容が全く手に入らない」
語尾に近づくに従って、感情の昂ぶりを抑えきれずダージリンの声が震える。無理やりそれを押さえようとしてか、彼女は残りの紅茶を一息で飲み干す。
聖グロ生がカップ鷲掴みで紅茶をがぶ飲みする姿など、OG会の人間が見ればおそらく卒倒ものだろう。
「情報秘匿の度合いで言えば、フィリピン海方面から迫る“新型”の関連情報と同程度よ。
自衛隊に勤めているOGを筆頭に、外務省、警視庁、公安、さらには近隣の鎮守府、あらゆる伝手を辿っているけれど一向に学園艦内の現状が判明しない。辛うじて、“暴徒が発生している”とか“通信が全く繋がらない”とか、そういった断片的な情報を拾えただけ」
「………西住さんの安否は?」
「それも、解らない。
………いえ、きっと、無事でいる筈よ。彼女は、西住みほは簡単に死ぬような人間じゃない。生きているに決まっているわ」
自分に言い聞かせるように繰り返される、「生きている」という言葉。だが、やはり回を重ねるごとにそれはか細くなっていき、やがて弱々しい嗚咽と共にそれは途切れた。
「うぇっ………ひぅっ………」
「………今までの軽口は空元気ザマスか」
どんなに言葉で否定しても脳裏から追い払えない“最悪の想像”に、とうとう机に突っ伏し泣きじゃくり始めたダージリンから努めて視線を外しつつため息をつく。
全く、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。
……自分自身も含めて。
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