275: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/02/10(土) 23:17:37.61 ID:tuhNfgCQ0
これまで見てきた商店街の様子からある程度察していたことだが、店内もまたがらんどうだった。
客は今し方入ってきたアスパラガス自身とカウンター席の中程に座るダージリンの二人だけ。後は店員と思わしき初老の女性が厨房にいて、フライパンを揺すって何かを焼いている。
「そんな入り口に立っていないで座りなさいな。安心して頂戴、店内にはジェームズ=ボンドもゲイリー=アンウィンも潜んでないわ」
「私としてはそこにトーマス=E=ロレンスも付け加えて欲しいザマスね」
「あら、“アラビアのロレンス”をご存じだなんて通なのね」
クスクスと笑うダージリンを無視して、アスパラガスは胡乱げな目付きで店内を改めて眺める。スパイ云々も聖グロリアーナならやりかねないため幾らか警戒はしているが、それ以上に店の内装が彼女の眉を顰めさせていた。
「……………ここ、本当に私達が使っていても平気ザマスか?」
「いやぁねぇ、ランチタイムは普通のレストランを営んでる酒場なんて国内外問わず腐るほどあるでしょうに」
カウンターの上や壁際の棚は勿論のこと、窓際や天井の収納スペース、挙げ句の果てには本来客が座るためのスペースと思われるテーブルの上にまで所狭しと並べられた………というよりは店そのものを入れ物として乱雑に詰め込まれたかのような、凄まじい数の酒瓶。微かに漂うアルコール臭も相まって不安の色を浮かべるアスパラガスの様子を見て、再びダージリンは笑みを漏らす。
「この店も同じよ。これらのお酒は未成年には振る舞われないわ。
────それと、私が耳に挟んだ話では貴女たちタンカスロンの試合中にアンツィオの“大人のブドウジュース”を」
「あれはボルドー達ザマス!!私は飲んでない!!」
ドンッとカウンターに拳を叩きつけつつ、早速アスパラガスは来たことを後悔していた。
大英帝国をそのまま擬人化したような言動と性格のこの女を相手にすると、いつも戦車道試合の20倍ほど体力を使うハメになる。
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