桃子「私のサンタさん」
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11: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:39:02.88 ID:eVTNZvKo0
「……プロデューサー」

「ん? 何だ、杏奈?」

「杏奈、いくらクリスマスでも…… クマよりもウサギのぬいぐるみがいい…… だから、このプレゼント…… プロデューサーの、ガールフレンドとかに…… 渡せばいいと、思うよ……?」
以下略 AAS



12: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:39:56.06 ID:eVTNZvKo0
家族に杏奈を渡して俺は急いで劇場に戻る。本来、杏奈に渡すべきだったプレゼントは今もトランクに入ったままだ。時計を見れば11時を指している。あまり猶予はない。

劇場に戻ると既に音無さん以外の大人組が揃っていた。俺は息を切らせながら、口を開く。

「はぁはぁ…… すいません、みなさん! 少し、やらなくてはならないことができたので、 申し訳ありませんが、今日は帰らさせていただきます」
以下略 AAS



13: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:40:48.39 ID:eVTNZvKo0
「…… 何やら、訳アリのようだね? 真剣な眼差しをみて分かるよ。……プロデューサーの仕事はただアイドルに仕事を持ってくるだけでは務まらない。アイドル自身が楽しい、と思えるような、そんなプロデュースをしなくてはならないのだよ。くれぐれもアイドルを悲しませないでくれよ?」

「社長…… ありがとうございます!」

「君が来るのは一段落してからで全然構わないよ。その時は酒の肴になるようないい話を持って来てくれよ?」
以下略 AAS



14: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:41:23.53 ID:eVTNZvKo0
 サンタさんはトナカイに乗って空からやってくる。

 そんな幻想は私が女優を始めたその年に消えた。

 私が女優を始めて以来、母親と父親の関係は急に悪くなった。それまでは家族でどこかに出かけたり、誕生日を祝ってもらったり、と仲の良い一家だったと思う。しかし、私の女優業が波に乗り出した頃、私の教育方針で両親は真っ二つに分かれ、そのまま妥協点を見いだせずに今に至っている。怒りの矛先が私に向くこともしばしばあり、その時は決まって口を閉じて黙っていることしかできない。当たり前の幸せが、突然失われる悲しさを知って、私は大人にならざるをえなかった。
以下略 AAS



15: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:41:53.47 ID:eVTNZvKo0
 そして今年もクリスマスが来てしまった。世間が浮足立つのに対して、うちはいつも通り。しかし、今年は嬉しい出来事もあった。なんと劇場のみんなとクリスマスパーティができたのだ。私にはサンタは来ないけど、あんなに楽しかったんだからこれ以上望んだら欲張りだよね。そういえば、環と育にはちゃんとサンタが来たのだろうか。あの二人は私と違っていい子だから…… きっと今頃、枕の横にはプレゼントが置かれていることだろう。

 サンタのことを考えているとふと思い出し、時計を見た。時刻は11時57分、ちょうどいい時間だ。そろそろ夢から現実に戻らなければ、周防桃子でなくなってしまう。私は自分への戒めとして部屋の窓から夜空を眺めた。



16: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:42:52.18 ID:eVTNZvKo0
 3分後、日付が変わった。ずっと夜空を見ていたが何ら変化はなかった。はぁ…… やっぱり今年もサンタさんはいなかった。数年前から毎年行っている儀式のようなものだが、もう今年で潮時だろうか。1時1分になったらやめよう。そう決めて最後、窓の外に目を遣る。……時間だ。我慢していた寒さが急に強みを増した。もう寝よう、そう決めて振り向きかけた時、視界の隅で何か動いてるものを捉えた。

 私は驚き、もう一度、窓の外を見た。夜空は依然と静かなままである。しかし、見間違えではなかった。それは道路をせっせと走って私の家へと向かって来た。遠目で暗くて良く見えないが、帽子を被って大きな袋を持っている。あれは…… サンタなのだろうか?



17: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:43:57.90 ID:eVTNZvKo0
 私は興奮してそれに注目した。私の家に着いたと同時にインターホンを鳴らした。母親が出た。何やら話をしている。話が終わったのかそれは家の中に入った。足音が聞こえる。私の部屋へと向かってきている。私は慌てて布団に潜り込んで、寝たふりをした。

 「桃子ちゃん、お邪魔しまーす」

 声が聞こえる。きっとサンタだ。
以下略 AAS



18: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:44:52.24 ID:eVTNZvKo0
 「うっ、え〜っと、そうだねぇ、あはははは、実は地図を失くしちゃってね。桃子ちゃんの家を忘れちゃったんだ〜 本当にごめんね?」

 「もう! さみしかったんだからね! 本当に…… 今年は来てくれてよかったよ……」

 「大丈夫! もうこれからは来年も再来年もぜ〜ったい、来るから安心しててね!」
以下略 AAS



19: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:45:54.00 ID:eVTNZvKo0
 「……いつから気づいてたんだ」

 「最初からだよ。こんな夜中にサンタの格好して走ってきて。そんな事する人、桃子、プロデューサーしか知らないよ」

 「あ〜あ、やっぱり俺には演技の才能は無いな。何か、根本的にダメな気がする」
以下略 AAS



20: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:46:36.73 ID:eVTNZvKo0
 「確かに、桃子の仕事の大部分は演技だ。でもお前の今の仕事は女優でも天才子役でもない。アイドルだ。だからお前を役者としては売り出さない。アイドルとして俺がプロデュースする」

 「でも、だからといって昔と変わんないよ!」

 「変わる!!!」
以下略 AAS



21: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:47:21.85 ID:eVTNZvKo0
 「あぁ。それとも桃子は劇場のみんなを信用できないのか?」

 「そんなことっ……! ……ないけど」

 「だったら大丈夫だ。辛いときは俺や劇場のみんなを頼れ。一人で持てない荷物でもみんなで持てば軽くなるもんだ。だから……、辛さや悲しみは俺たちと分け合おう」
以下略 AAS



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