高嶋友奈「結城ちゃんは勇者である」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 20:27:45.13 ID:WIN2YWrHo

友奈(全てが灰色で、色のない場所に私は居た)

友奈(ここは多分私の心の中なのだと思う。私は海の中のように、宙で漂っていた)

友奈(見えないけど、目の前には檻のようなものが確かにあって、そこには強力な力が封印されているのが分かる)

友奈(この檻の扉を開けさえすれば、一目連よりも強い力を私は使えるはずだった)

友奈(だけど)

友奈(……怖い)

友奈(どうしようもなく怖い。覚悟を決めたはずなのに、誰かを助けるために自分はどうなっても良いといつも思っていたはずなのに、私はとても躊躇してしまっている)

友奈(本能が言っているんだ。"それ"の封印は絶対に解いちゃいけないって)

友奈(どうしよう? と思ったのはそれでも数瞬で、私は恐る恐るだけど、檻に手を……かける)

友奈(瞬間)ゾクリ

友奈(──たくさんの声が頭の中に響いていた)

《……黒いものが私の心の中に入ってくる……》
《……高嶋さん……最期に、一目だけでも──》
《……どうして救ってくれなかったのだと、友の亡霊たちが言うんだ……》
《……怖い……助けて……タマっち先輩……》
《……駄目なのに、なんでタマはこんなこと考えて……》

友奈「あ……あ、あぁあぁぁあぁぁぁぁッ!!」

友奈(頭の中に知らない人たちの心がいくつも入ってくる。一つ入ってくるたびに、私の心が一つ黒くなっていく。心の中の誰かがそれを"穢れ"だと言った。心が穢れていくことで、私は破滅へと進んで行くのだと私ではない誰が言ったように聞こえた)

友奈(多分、私の中に四人か五人くらい誰かが居て、頭がおかしくなりそうなくらい記憶をかき混ぜられてしまっている。それは耐えがたい痛みだと思った。身体ではなく精神を傷つけられるような言葉では表現できない激痛。そう思いながらも、こうしてやけに冷静な自分もここに居て──)

友奈「があぁあぁぁっ!!」

友奈(今、苦しんでいる私はやっぱり自分自身で、唐突に、こうして考えている今の私も同じようになってしまった時、高嶋友奈という人間が消滅してしまうのだと分かった。多分、手甲が教えてくれたんだと思う)

友奈(やっぱり人が触れてはいけない力だったんだね……)

友奈(それでも……それでも! 私は! 諦めたりなんかするもんか!)

友奈(誰かのために戦って傷ついて、必至に何かを守ろうとしたあの子を助けられるのは今は自分だけなんだ!)

友奈(あの子を助けるためだったら、どんなに苦しくても根性で耐えきってやる!)

友奈(だから!)

友奈(私は絶対に! 諦めない! 諦めてたまるかぁあぁぁっ!!)



友奈(──そして、気付いた時には、灰色の世界の中にたった一色だけ、色が現れていた)






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