【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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55:名無しNIPPER[saga]
2017/12/31(日) 10:12:17.33 ID:0m/dVbvg0

…………………………

「……なるほど」

 そこは黒い場所。光はある。けれど、全てが黒い、暗闇の場所。

「プリキュア……ロイヤリティに伝わる伝説は本当だったということか」

「申し訳ありません、デザイア様。私が勇気の王子、優しさの王女を侮ったばかりに……」

「……いや。伝説の戦士に関しては私も信じていたわけではない。不測の事態だったと言えるだろう。貴様だけの責任ではない」

 声に抑揚はない。闇そのものが放つようなその涼やかな声は、ゴーダーツをねぎらうでも、糾弾するでもなく、ただ事実を述べるだけだった。

「先ほど、私が呼び出したウバイトールの消滅を感じました。おそらくは、プリキュアが闇の欲望を解き放ったのかと」

「ふむ。ロイヤリティの伝説の戦士、予想以上に厄介なようだな」

「ええ。早々に排除すべきかと」

 ゴーダーツは深く低頭したまま、闇の言葉を待った。次は遅れを取るような無様な真似はしない。声の命令あらば今すぐにでもあの場に舞い戻り、プリキュアたちを叩きつぶす心づもり
だったのだ。

 しかし。

「……命令だ、ゴーダーツ」

「はっ」

「今すぐに、ダッシューとゴドーをこちらに召喚しろ。いずれ奴らの力も必要になる」

 声が放ったのは、ゴーダーツの予想を大きく外れた命令だった。

「お、お待ちください! 私に、もう一度チャンスをお与えください! 今度こそ、優しさのエスカッシャンを奪い取ってごらんに入れましょう!」

「勘違いをするな、ゴーダーツ。何も貴様を信用しないというわけではない」

 声はやはり、何の感情もみせることはない。

「情熱のエスカッシャン。そして愛のエスカッシャンは、ダッシューとゴドーが持っている。それを使って情熱の王女、そして愛の王女を探させるというだけのことだ」

「……はっ、なるほど。勇気の王子、優しさの王女がプリキュアを生み出したということは……」

「ああ。他のふたりの王女もまた、プリキュアを生み出すことができると考えるべきであろう。その前に、なんとしても王女たちを捕まえ、紋章を奪い取るのだ」

「……かしこまりました。ただちに、ダッシューとゴドーをこちらに呼び出す手配をいたします」

「後は頼んだ。私は少し出る」

「? どちらへ行かれるのですか?」

 言ってしまってから、己が愚を犯したことを悟った。声の主は無為に詮索されることを嫌うのだ。

「も、申し訳ありません! 私の知るところではございませんでした」

「……構わぬ。直にこの目で見ておきたいだけだ。いずれ我々が欲望の赴くままに食い尽くす、希望の世界 “ホーピッシュ” とやらをな」

 言葉を締めくくると同時、黒い暗闇を支配していた声の気配が消えた。冷えた声の余韻を感じながら、ゴーダーツは深く低頭したまま動けずいた。

「やはり恐ろしい。闇の欲望を支配される、暗黒騎士デザイア様」

 ようやく立ち上がったゴーダーツは決意も新たに歩き出した。

「次は無様な体たらくを晒すわけにはいかん。覚えていろ、伝説の戦士……!」

 その胸中に、打倒プリキュアの文字を刻みつけながら。



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