【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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516:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:35:15.95 ID:7mW+iPec0

…………………………


 ―――― 強くならなければならない。



 それは、めぐみの心の中に生まれた強い意志だ。

 デザイアの剣には全く歯が立たなかった。

 ゴーダーツの剣にも全く歯が立たなかった。

 そして、キュアユニコの “守り抜く優しさの光” は守護と防御に重きを置かれていて、それを攻撃に転用するのは難しい。

 それはつまり、めぐみは自分自身の地力を高めなければならないということに他ならない。



 ――――『フェンシング部にすごく強い先輩がいるらしいよ! 今度全国大会に出るんだって!』



 それは、自称情報通のユキナの言葉だ。めぐみはその情報を聞いてすぐ、その日の放課後にフェンシング部の見学に赴いた。しばらく練習風景を眺めたが、それはめぐみの求めるものではなかった。あんなに細い剣を振るうための技術は、きっとカルテナを振るう役には立たないだろう。もしかしたら役立つのかもしれないが、きっとそれはめぐみの求めるものではない。

 ふと思い出されるのは、もうひとつのユキナの言葉だ。

 ――――『しかもすごいイケメンで、ファンも多いんだって! 練習のおっかけとかもいるらしいよ!』

 そんなどうでもいい情報もあったが、めぐみにはよく分からない。そもそも、面を被っているから、顔など見ようもない。なんとなく、片隅で少し残念な動きをしていたのが、フェンシング部顧問の皆井先生というのだけはわかったが。

 何がどうであれ、フェンシング部にめぐみの求める強さはありそうになかったのだ。

 めぐみは落胆しながら、フェンシング部の練習場がある格技棟を出ようと歩を進めた。そのときである。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 すぐ横から、そんな怒号のような声が聞こえた。

 人影と、それより大きい人影が、正面から向かい合っている。その怒号のような声は、小さい方の人影から発せられているようだった。



「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」



 対する大きい人影の声は、もっと凄まじい大音声を持って、その場を制圧した。

 そして、二つの人影が交錯する。声の差だけではない。速度、力強さ、その他の何もかもにおいて、大きい人影が圧倒的だった。

 目が、離せなかった。

「……アレだわ」

 めぐみはようやく、自分が探し求めていたものを見つけたのだ。

 入り口にかかっている札を見る。

 曰く、『剣道場』。

 あの、圧倒的な剣戟に対抗する術を見つけたのだ。めぐみは再び、竹刀をぶつけ合うふたりの人影に目線を戻す。

 勇猛果敢にも打ちかかった小さい人影は、対する山のような存在に、いとも容易く捌かれ、素人のめぐみには何がなんだか分からないまま、すぐに勝負は決したようだった。

 そこでひとまず休憩と相成ったようで、生徒たちが面をとり、各々休憩し水分補給をしている。その中に入っていくことに抵抗はなかった。入っていかなければならない。もう迷っている猶予はあまりないのだ。

 中等部の女子生徒が入ってきたからだろう。周囲の、高等部の男子生徒たちが戸惑いを隠せないという顔をする。

「あの、部活動の指導中、失礼します」

「……? 2年A組の大埜か。何か用か?」

 突然のめぐみの乱入に、当の相手は戸惑う様子はない。その胴着姿は、周囲の男子高校生と比べて、圧倒的に様になっている。

「郷田先生、無理を承知でお願いしたいことがあります」

「なんだ」

 相手――郷田先生はまっすぐにめぐみの目を見返した。

「私を、先生の弟子にしてください」

 めぐみは大真面目にそう言うと、深々と頭を下げた。



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