【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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421:名無しNIPPER[saga]
2018/04/01(日) 10:10:49.02 ID:TVNRAefO0

…………………………

「っ……」

 掴まれた肩に痛みはない。ダッシューには、あきらを傷つける様子は微塵も感じられなかった。ダッシューは一見して優しげな笑みを浮かべて、とうとうと語る。

「ねえ、お嬢さん。君はその王女様の何を知っているんだい?」

「な、何を、って……」

「何も知らないんじゃないかい? いや、もちろん、ロイヤリティのこととか、情熱の国のこととか、ぼくらアンリミテッドのことくらいは聞いているかもしれないねぇ」

 けれど、と。ダッシューは酷薄に笑う。

「王女様をはじめとした王族が何をしたのか、それは聞いていないんじゃないかな。正直な話、君の誠実さと体力には、少しだけ敬意を表したいところなんだ。大方、すぐにぼくに王女様を差し出すか、もしくはすぐに疲れ果てて、ぼくに王女様を取られるか、そのどちらかだと思っていたからね」

「ど、ドラ……」

 パーシーがガタガタと震え出す。ダッシューはその様を見て、やはり嗜虐的に笑う。

「ねえ、王女閣下。あなたたちは卑怯だ。ホーピッシュの人間を利用するために、まるで自分たちは被害者だというような顔をする。あのとき、あの瞬間、あなたは情熱の国の臣民を見捨てて、王様やお后様と一緒に、情熱の国を逃げたというのに」

「ど、ドラ……! に、逃げた、わけじゃ、ない……ドラ……。パーシーたちは、エスカッシャンを、守るために……――」



「――その言い訳を、果たして闇に飲み込まれたロイヤリティの臣民は、聞いてくれますかねぇ」



「ドラ……」

「パーシー……」

 ダッシューは、あきらの肩から力が抜けたのを感じたのだろう。そっとあきらの肩を放すと、優しく話し始めた。

「さ、お嬢さん。王女様を渡してくれるかな。その王女様は、ロイヤリティを捨てて逃げ出した。そして、その事実を君に隠し、君を利用するために近づいたんだ」

「…………」

「君が守る必要なんてないんだ。だから、ほら、ぼくに、ちょうだい?」

 それは、ダッシューの最後通牒だったのだろう。言葉は優しげだが、ダッシューは、それを最後と決めているようだった。もしもあきらがそれを断れば、直接あきらに危害を加えるかもしれないと、暗に言っているようだった。

「……わたしは」

「うん」

 あきらは、震えるパーシーをぎゅっと抱きしめた。

「パーシーは、言わなかったんじゃないと、思う」

「……なに?」

 ダッシューの顔から笑みが消えた。それを恐ろしく思いながら、それでもあきらは、口から紡がれる言葉を止めることができなかった。

「パーシーの気持ち、わかるんだ。言いたいことは山ほどあっても、気持ちって、全然伝えられないし、伝えるのは、怖いし」

「…………」

「それを伝えた後、相手がどんな反応をするか、想像するのも怖い。考えるのも怖い。だから、人と話をしたくなくなるんだ」

「何が言いたい?」

「……それでも、想いを伝えなきゃ、想いは伝わらないんだ」



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