【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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240:名無しNIPPER[saga]
2018/02/11(日) 18:17:19.21 ID:Vt5kauhK0

…………………………

 世界は欲望に満ちている。

「……うざいうざいうざいうざい!!!」

 欲望とは、何も『あれをしたい』『あれが欲しい』といった単純なことだけを指すのではない。

 何かをしたくない。何かを消してしまいたい。そういった想いもまた、欲望となりえるのだ。

「うるさいぞ、ゴドー。少しは静かにできないのか」

 床に寝そべり、まるで駄々っ子のように騒がしいゴドーをいさめるのはゴーダーツの役目だ。

「うっさい! 何をするかなんて、あたしの勝手でしょ!」

「その勝手とやらが、俺の迷惑になっているのだ。理解しろ」

「うっさい!」

 とりつく島がない。会話をしようという気すらないのだろう。

「……仕方がない」

 ゴーダーツは合理主義者だ。己の欲望を達成することができないなら、他の方法を探し実行する。ゴドーが騒ぐことをやめないのなら、ゴーダーツが別の場所へ移ればいいだけの話だ。

「くだらん……」

「待ちなさいよ」 剣を提げ、腰を上げたゴーダーツを引き留める声。ゴドーだ。「どこに行くのよ」

「どこであろうと俺の勝手だ」

「……ねえ、ゴーダーツ」

「何だ」

 これを最後の会話にしようと心に決めて、ゴーダーツはゴドーに背を向けたまま応じた。そうしてしまったのは、自分を呼ぶゴドーの声に、普段の彼女らしからぬ弱さが垣間見えたからだ。

「プリキュアって、何なの? あいつらはどうして王子たちを守るの?」

「…………」

 ゴーダーツは黙したまま、そっと振り返った。ゴドーは起き上がり、真剣な顔をしていた。

「あいつらからは何の欲望も感じられなかった。自分のために何かをしようとしているのではないのよ。あんなの……信じられない」

「……そうだな」

 世界は欲望に満ちている。それはアンリミテッドに限った話ではない。ゴーダーツはダッシューやゴドーに先んじて、ホーピッシュにてロイヤリティの生き残りを捜していたから分かる。プリキュアたちが住まうあの世界もまた、欲望に満ちているのだ。あそこに住まう人間たちも、自分たちアンリミテッドに勝るとも劣らないほどの欲望を、それぞれの心のうちに秘めているのだ。

 そしてきっと、プリキュアたちもまたその心の内に欲望を持っているはずなのだ。

「奴らは王子たちを利用して何かをしようとか、そういう考えは持っていないようだ。ただ純粋に王子たちを守りたいのだろう」

「……意味わかんない。何それ」

 不機嫌そうなゴドーの声。そう言われたところで、ゴーダーツにも分からない。

「さぁな。とにかく、我々とは考え方が根本から違うのだろう」

 ゴーダーツはそれだけ言うと、さっさと歩き出した。ゴドーの言葉は真剣そのものであったし、憂慮すべきことでもあったが、今のゴーダーツは何より己に目を向けていた。

(もっと強くならねば……俺は、一度、完膚なきまでにプリキュアに敗れているのだから)



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