【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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146:名無しNIPPER[saga]
2018/01/21(日) 10:44:30.63 ID:agWmrLpM0

「!? で、デザイア様!?」

 重い扉に寄りかかるようにして、ゴーダーツはおろか、ダッシューよりも華奢な黒ずくめの紳士が立っていた。仮面の下の表情は窺い知ることができず、ただ空虚な目線がゴーダーツを貫く。

「貴様は欲望の力で何がしたい? 何を望んだ? そして、ロイヤリティをなぜ憎んだ?」

「…………」

「思い出せ。そして悲しみに泣き、怒りに震え、憎しみに悶え、憤りに吼えろ。貴様を裏切ったロイヤリティとその王族を許すな。叩きつぶせ。そのための欲望は、貴様の中にしかないのだ」

 言葉は淡々としていた、どこまでも簡潔だった。しかし、そのデザイアの冷たい言葉は、冷たく暗い炎をゴーダーツの中によみがえらせた。

「……デザイア様」

「なんだ?」

「……佩刀の許可を頂きたく存じます」

 ゴーダーツの暗い瞳がデザイアの仮面を見据える。その覚悟がデザイアにも伝わったのだろう。おごそかにうなずいた仮面の紳士は、細い腕を振るう。その手が黒いもやに包まれ、やがてそのもやが形を作る。それは、長大な漆黒の剣だ。

「……使え。欲望の闇で塗り固められた業物だ」

 デザイアがその剣を放り投げる。受け取ったゴーダーツは、恐ろしく重いその剣を、厳かに拝領した。

「……かつてのことを思い出すわけではありません。私は、私として、欲望の戦士ゴーダーツとして、かつての“私”を利用するというだけのこと。そう、私は、私の欲望のために、過去の己を利用する。ただ、それだけです」

「ああ。己の何もかもを利用してでも、己の欲望を全うする。それでこそアンリミテッドの戦士だ」 デザイアは抑揚のない声で告げると、ゴーダーツに背を向け、扉に手をかけた。「今日のところはダッシューに任せておけ。貴様は剣の稽古でもしているがいいだろう」

「はっ。そうさせていただきます」

「ああ」

 扉を開き、暗黒へと足を踏み出したデザイアを、しかしゴーダーツが呼び止めた。

「デザイア様!」

「……何だ?」

 ゴーダーツは深く低頭し、腹の底から声を出した。

「ありがとう、ございます……!!」

「…………」

 デザイアはもはや顔すら見えぬほどに深く頭を下げるゴーダーツに何を言うこともなく、そのまま扉の奥へと消えた。



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