11:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 12:30:49.55 ID:nZJI/gt30
思えば留学を決めたときだってそうだった。
いろいろ説明してくれる先生の前で、私はずっとスクールアイドルのことを考えていた。
どうして果南は歌えなかったんだろう。
どうして果南は踊れなかったんだろう。
私はどうすればよかったんだろう。
果南に直接聞いてみても、「怖かった」の一点張りだった。
やり直そう、もう一度頑張ろう、本当に諦めるの?
ぶつけた言葉は全部全部、真っ暗な海の底みたいな瞳に吸い込まれて消えてしまった。
足が治ってからは、一人で練習を続けていた。
毎日予定を伝えたけれど、果南は一日たりとも来てくれなかった。
私は部室に一人きり。
ときたま、制服姿のダイヤが遠慮がちに顔をのぞかせるだけだった。
私は、たぶん疲れていた。
何もできなかった、そしてこれからも何もできない自分に。
八つ当たり気味にダイヤを怒鳴りつけたことだってあった。
ダイヤは静かに顔を伏せ、ずっと私の言葉を聞いていた。
私は、たぶん疲れてしまったのだ。
私の言葉はどこにも届かない。
こんなに近い距離にいるのに、2人はどこか遠くへ行ってしまったようだった。
そして私も、大事なものをぽろぽろぽろぽろ溢しながら、結局、飛行機に乗ったのだった。
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