62: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:54:43.57 ID:Qezuh/qr0
「さてっ」
指先をぺろりと舐めて、イヴは風向きを測る
山積みのプレゼントを載せるソリも、流石に五人も乗ると少し狭かった。
「本日夕刻、熊本上空は晴天なりっ! 風は無し! この上もない、空中散歩日和ですよ〜っ!」
「ブモッ!」
「クリスマスにはちょっと早いけど、よい子を守るのもサンタのお仕事! ということで〜……ブリッツェン、はいよ〜っ!!」
「ブモモモモーーーッ!!」
どるるんとエンジンめいた鼻息を吹いて、四つの蹄が地面を叩く。
一歩踏み込み、二歩三歩で一気に加速、やがて蹄は地ではなく空を踏み――
「わ、わ、わ……っ!?」
「しっかり捕まってろよ、美穂!」
などとカッコ付けたことを抜かしつつ、俺も初めて乗るので正直ドキドキもんである。
慌ててこちらに寄りかかってくる美穂を支えて、前を――ブリッツェンが向かう先を見た。
視界は水平から徐々に斜めへ。街の光景は、やがてずっと下に置き去りになって。
目の前いっぱいに広がるのは、暮れゆく杏色の陽。
かくしてクリスマス前のサンタのソリは、落陽に染まる空を飛んだ。
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