小日向美穂「空と風と恋と山と街と狸と人と」
1- 20
39: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:24:34.42 ID:Qezuh/qr0

「うんむ」

 と頷くが早いか、白毛玉のお爺ちゃんは茶釜の蓋をぺっと開けて、一升瓶の焼酎をどぼどぼどぼどぼ注ぎ込みます。
 かと思えば、茶釜がいきなり唸りを上げて震え出しました。

 その様子は、さながらガソリンを燃焼させるエンジンのようで――


「空中露天座敷、離陸(リフトオフ)!」


 ぶあっ、と座敷が浮き上がって。
 私達を置き去りにして、彼らは八畳敷きごと空の狸となりました。

「うっそ、飛んどる……!」
「ほー」


「うはははははっ! 見たか、見たか! これぞ我ら狸が天狗様より賜りし秘蔵の品!!

 ――すなわち、彦山豊前坊様の霊威なり!! 親が恋しかったら空でも飛ぶか、平身低頭して許しを乞えーっ!!」


 高笑いする狸を乗せて、座敷はぐんぐん高度を上げていきます。
 空なんて逆立ちしても飛べない私達は、なすすべもなく見送るばかり。
 座敷はもう絶対に手が届かない高さまで登り、眠るお父さんとお母さんを乗せたまま、東に向かって加速します。


「茶番をやめんとあらば、この老いぼれ狸どもは英彦山深くの谷底に放り込んじゃる!

 雨吹山は海老原狸の怒り、とくと思い知るがよか! わーははは! わーははははは!!」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
150Res/122.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice