【モバマス】十年後もお互いに独身だったら結婚する約束の比奈と(元)P
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4: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2017/12/15(金) 22:46:31.54 ID:pJOnavxQ0
 一時間ほどの談笑のあと、三人は会計を済ませ店の前で別れた。心はタクシーを呼び自宅へ、瑞樹は仕事へ。比奈もイラストエッセイ原稿の締切りを控えているので、自宅へ戻ることにする。

 ハンチングを深めに被り、比奈は春の街中を駅へと向かった。街中が新たな年度を迎えたあわただしさと、鮮やかさに溢れている。
 そうしてまた季節が一周回ったら。比奈はそう考えて――そのまま、思考がストップした。
比奈には本当にわからなかった。
 多くの物語を紡ぎ、自分自身がアイドルとして物語になった比奈は、恋愛も、結婚も、理解して表現しなくてはならない場面はなんどもあった。
 しかし、それをどこかで自分の外のものとして見ていた。比奈はただ、あと一年で、自分になにか大きなことが起こってしまうという、漠然とした焦燥を感じていた。

 駅の改札ゲートを越えながら、比奈はぼんやりと、瑞樹に問われた三つの質問を反芻していた。

 『彼はどういうんなのか』。……判らない。一時は家族よりも繋がりが濃かった。でもそれは、ほかのユニットのメンバーや、プロダクションのアイドルたちも同じだった。

 『どーいうんがいいのか』。……判らない。考えたこともなかった。アイドルになったときも、その先の仕事でも、常に選ばれる立場だった。人を選んだことがなかった。

 『彼じゃだめなのか』。

「……」

 その質問を頭に浮かべたとき、ホームに電車が進入してきた。強い風が吹いて、比奈は思考を中断し、帽子を押さえる。
 停止した電車の扉が開き――比奈は目を見開いた。
 電車から降りてきたのは、比奈の『元』プロデューサー。あと期限一年の約束の相手だった。
 吹いた風に遅れて、どこからから飛ばされてきた花弁が、二人のあいだをひらひらと舞っていた。

 つづく



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