【モバマス】十年後もお互いに独身だったら結婚する約束の比奈と(元)P
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2: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2017/12/15(金) 22:44:09.72 ID:pJOnavxQ0
「比奈ちゃん、誕生日おめでとーう!」

 グラスを合わせる音が小気味よく響く。
 平日昼間のイタリアンレストラン、予約客専用の個室には三人のメンバーが集まっていた。

「あ、はは……お祝いいただきまして、ありがとうっス、へへへ……」

 荒木比奈。本日で二十九歳の誕生日を迎えた。

「ぶっちゃけ、祝うって数字でもねーよな☆ でもおめでと!」

 佐藤心。平日をリクエストしたのは心の都合に合わせたためだ。

「なにいってるの! いくつだって全力で祝うわよ! イェーイ!」

 川島瑞樹。夜は仕事があると言っていたが、ワインを控えるわけではないようだ。

「で、どう? 比奈ちゃん、二十九歳を迎えた感想は? あと一年で大台ね!」

「おおう、瑞樹さぁん、いきなりエゲツねーっす……」

 心が苦笑いしている。

「うーん……そっスねぇ……」比奈はグラスを置いて頭を掻く。「……えーと……その……」

 普段の比奈とは違う、曖昧な態度に、瑞樹と心は顔を見合わせた。

「ちょっと、比奈ちゃん、……ほんとに気にしてる?」

「いやいやいや、違うっス!」

 心配するような瑞樹に、比奈は顔の前で手をぶんぶん振って否定した。

「何かあった?」

 心が尋ねると、比奈は二人の顔を見てから、はぁぁぁ、と長い溜息をついた。

「えーっと、何から説明していいやら……その、ずいぶん昔の話になるっスけど……」比奈は口をとがらせて、テーブルの角を見つめて続ける。「その、九年前に……プロデューサー……あ、『元』っスね……その、賭け、してまして。アタシが三十路になってもお互い独身だったら、その、け、結婚する、って」

 しばし、沈黙がその場を支配した。

「ちょ、ちょっと、どーして二人とも黙るっスか! アタシはこんなに悩んでるっスよ!?」

 やがて、沈黙に耐えなくなったのか、比奈が困ったような叫び声をあげる。

「なるほどね……」瑞樹はうんうんと頷いてから心の方を見て尋ねる。「どうしたものかしら?」

「いや、姐さん、ここはもう少し話を聞きだしてみましょうぜ」

「姐さんはやめてほしいわ……そういうわけよ、比奈ちゃん、くわしく教えて?」

 瑞樹がにっこり笑うと、比奈は再び頭を掻いた。

「ええと……その、九年前の話なんスけど……からかわれたっス、男っ気が無さすぎるって。だから言い返したっス、彼女の一人もいないプロデューサーには言われたくないって、そこから軽く煽りあいになって、なんだかんだで、その……お互いに十年後相手がいなかったら、結婚しよう、それを絶対回避することを目的にお互いにいい相手を見つけて、早かった方が相手を大いにあざ笑おう……と、なったっス……で、期日の十年まで、あと一年っス」

「はぁ〜」心は長い息をついた。「判定はどうですか、姐さん」

「そうね」瑞樹は空になったグラスを机に置きながら真面目な顔で言った。「早苗ちゃんならこう言うわね……『ギルティよ』」

「だぞ☆」

 心が瑞樹に続く。

「いやいやいやいや、真面目に悩んでるっスよ、先輩方にアドバイスを頂きたいと思いまして」

「はーもう心ちゃん! もう一杯もらいましょう!」

「よいしょー☆」

 心は注文用の端末を数回タップした。




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