【モバマス】十年後もお互いに独身だったら結婚する約束の比奈と(元)P
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◆Z5wk4/jklI
[saga]
2017/12/20(水) 21:24:44.57 ID:VIfuC7c00
<3>
「……芸能人として一番いい時期だから、心配は心配よ。正直に言って、本当は止めたい。でも……私も、千枝がずっと抱いてる想いは知ってる」電話の向こうで、千枝のプロデューサーは、低く、冷静な声で話す。「だから、マスコミに抜かれるようなことだけは避けて。できる限り協力するから」
「うん、ありがとう……それじゃあ」
千枝はそう言って、携帯電話をテーブルの上に置いた。
ひとつ深呼吸して、もう一度携帯電話を取る。次にかけるべき相手は、千枝の「元」プロデューサー。千枝が所属していたユニット、ブルーナポレオンを担当していた。今はプロダクションを離れ、別の会社で働いている。
――千枝ではない女性との約束のために。
千枝は緑色の通話マークを操作する。
数回目のコールで、電話がつながった。
「――はい、もしもし」
懐かしい声。千枝やほかの元ユニットメンバーになにかいいことや大きな仕事があるたびにメールでの連絡はもらっていたが、最後に直接話したのはもう一年以上前のことだった。
千枝は口角が上がっているのを自覚する。
「あの、突然電話して、ごめんなさい」
「いや、いいけど、どうした?」
優しい口調だった。あの頃のままだ。鼓動が早くなった。
「その……再来年の七日……」
ずっと前から用意していた言葉なのに、胸の奥でつっかえて戻ってしまいそうになる。千枝は電話を持っていないほうの拳を強く握って、自分を奮い立たせた。
「私、オトナになるんですよ。お酒も呑めるようになります。……ずっとずっと前、約束したの、覚えてますか? オトナのお酒、教えてください!」
声に出した瞬間、椅子に座っているのに足元が崩れるような感覚に陥る。
「……ああ……」
一瞬の間のあとの戸惑うような声。実際には二秒と経っていないだろうに、それを待つ時間は恐ろしく長く感じられた。
「そっか、約束……約束、な……」
曖昧な返事。無理もない。まだ子どもだった千枝がオトナぶってした発言に対する、その場を収めるための回答を今になって約束だからと言って持ち出すほうがどうかしてる。
でも。千枝にとっては、ずっと胸にしまってあった大事な大事な約束だった。
「……いくつか、条件をつけるよ?」
真摯な声が帰ってきた。
「はいっ」
最初の関門を突破できたことに、千枝の返事は安堵と嬉しさですこし震えた。
「一つ目。六月七日のその日はさすがにだめ。二十歳の誕生日は大事な記念日だから、家族と過ごすこと。過去とはいえ大切なお嬢さんを預からせてもらった身として、その日を奪ったらご両親にも顔向けができなくなるよ。二つ目。今のプロデューサーに必ず報告すること。元プロデューサーでも、いまは単なる一般人だからね。それから最後。二人きりじゃなくて、かならずほかに誰か人がいること」
「一つ目と二つ目は、わかりました。でも、最後の条件は、嫌です」緊張で飛び出しそうな自分の心臓を押さえるように、胸に手を当てる。「二人きりが、いいです」
「……」
間が空いた。顔を見なくても、困っているのがわかる。
千枝は次の言葉を続ける。
「大丈夫です。誰にも怪しまれたりしない場所があるんです」
これも、ずっと前から用意していたものだ。二人きりで会うのを断られるのは判っていた。あの人は優しいから、千枝の経歴に傷がつきそうなことは避ける。だからそれを満たすための手段をはじめから用意していた。
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