150: ◆DbWk4vc3J.[saga]
2017/12/23(土) 22:52:42.38 ID:DJB5nuYw0
番外編【恋する乙女、原村和】
私、原村和は恋をしています。
出会いは、高校で入った麻雀部でした。
「おはよう、和ちゃん」
「おはようございます、咲さん」
朝、いつもの道を歩いていると、後ろから私を呼ぶ声がしました。
そういえば、この人を麻雀部に引き入れたのも彼でしたっけ。
「今日は須賀君と一緒じゃないんですね」
「さっき京ちゃんから電話があってね。風邪引いちゃって休むんだって」
「そう、ですか」
入部したての頃の私であれば、さほど興味を示さない報告だったと思います。
しかしその報告に、私は意図せず不機嫌になってしまいました。
「どうしたの、和ちゃん。なんか嫌なことでもあった?」
更にはそれが表情に出てしまっていたようで、咲さんに心配を掛けてしまいました。
「なっ、なんでもありません!」
自分でも訳が分からなくなってしまい、動揺を隠せなくなった私はその場を早足で去りました。
確かに、私は咲さんほど、須賀君と仲が良いとは言えません。
それでもお互い連絡先は知っていますし、連絡するなと忠告したことなど勿論ありません。
―――どうして、私には教えてくれないのでしょう。
***
「いやぁ、ご迷惑をおかけしました!」
「ようやく戻ってきたわね」
凡そ反省しているとは思えない、ふやけた謝罪を重ねる須賀君を、部長は叱りません。
麻雀部の全員が、雑用などを一気に引き受けてくれる彼に助けられていることを知っているからです。
ですがそれでも、須賀君のいないたった一日を我慢できなかった人がいて。
「まったく、犬のくせに風邪とは情けないじぇ!泣いて詫びながらタコス作れ!」
「犬でも病気にはなるだろ!ったく仕方ねえな……」
病み上がりの彼に、優希は早速駄々をこねました。
そんな優希に呆れた様子で、彼は渋々、部室の台所へ歩を進めます。
「あの、須賀君?折角復帰したのに、優希の我儘に付き合う必要はないんですよ?」
「別に強制されてるわけじゃないし、後でこいつが騒がしくなる方が面倒だろ」
「なにを〜!私を悪く言った罰として、タコス三つ作れ〜!」
「あぁもう、はいはい。分かりましたよっと」
相も変わらずめちゃくちゃで筋の通らない優希の注文を、二つ返事で引き受ける須賀君。
恐らく優希も、彼がこの部活を支えてくれていることは承知しているはずです。
だというのに次から次へと欲求不満を垂れ流し、彼は嫌な顔ひとつせずに聞いてくれる。
彼の負担になるのは分かっています。それでも。
「ちょっぴり、羨ましい……」
「ん、なんか言ったか?和」
「い、いえ!何も言ってません!」
「そうか、なんかその、すまん」
照れ隠しにしては騒々しい返答をしてしまい、須賀君は申し訳無さそうな顔をします。
きっとこういうことが積もり積もって、彼の中での私の評価が下がってしまうのでしょう。
咲さんや優希は、あんなに裏のない態度で彼と接しているのに。
―――私も素直になって、この気持ちを伝えたいのに。
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