佐藤心「アホ毛?」小日向美穂「『ドリーミン・アーチ』ですっ」
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75:名無しNIPPER[saga sage]
2017/12/24(日) 23:21:38.11 ID:Tb36Fdbuo

 美穂は自分を奮い立たせるために、あのミニライブで見た光景を思い出そうとした。

 ステージの上、佐藤心の背中に勇気をもらったあの時を思い出せば、この呪縛を振り払えるはず。

 そう信じていた。


 しかし、美穂の脳裏に映し出されたのは、まったくの暗闇だった。

 差し込むスポットライトも、揺らめくペンライトもない。

 あの眩しく輝くアイドルの後ろ姿も、どこにも見えない。

 どんなふうに立っていたのか、どんな表情をしていたのか、どんな気持ちを抱いていたのか――自分のことすら、何も。

 あのステージの一切の記憶がなくなっていた。


 身の毛がよだつ。羞恥でも緊張でもない、それはただの恐怖だった。

(こんなの、これじゃまるで……)

 考えたくなかった。しかし、直感したことを訂正できるわけがない。

 これじゃまるであの頃のままだ――と、美穂は知ってしまった。

 成果を出せずくすぶっていた養成所時代の頃から、何も変わっていない、と。



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