佐藤心「アホ毛?」小日向美穂「『ドリーミン・アーチ』ですっ」
1- 20
74:名無しNIPPER[saga sage]
2017/12/24(日) 23:19:41.60 ID:Tb36Fdbuo

(どうして曲が始まらないの……?)

 体は動かないまま、思考だけが行き場をなくしてさまようように余計なことを考えてしまっていた。

 視線が痛い。観客が、美穂の全てを何ひとつ見逃すまいと凝視しているのがわかる。

 表情の作り方を、立ち姿の美しさを、歌声の伸びを、ダンスのキレを。

 これっきりのバックダンサーではなく、ひとりのアイドルとしての価値を見極めるために。

 フローリングにテープで仕切っただけの簡素なステージには、今はたった三人。まして美穂は真ん中に立っているのだ。

 そのプレッシャーは想像よりずっと重かった。


 覚悟はしていたつもりだった。

 なにより、美穂には自信があった。

 佐藤心のミニライブを経験し、彼女やプロデューサーが自分を認めてくれた。だからきっとアイドルとしてやっていける――そんな、ちっぽけだけど確かな自信。

 それを自惚れというのはあまりに酷だ。

『プロデューサーくん』に引っ張り上げられ、胸を張れたことで初めて手が届いたのだ。『プロデューサーくん』を失った今、そこにすがりつくしかない。

 だが、その自信さえも失おうとしていた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
86Res/78.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice