佐藤心「アホ毛?」小日向美穂「『ドリーミン・アーチ』ですっ」
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54:名無しNIPPER[saga sage]
2017/12/16(土) 23:10:10.01 ID:PMml/roUo

 打ち上げのあと数日は体調が思わしくなかったが、週末には養成所のレッスンに復帰できた。

 美穂は、自分が病み上がりとは思えないほど上手くやれていると感じていた。


 きっかけに『プロデューサーくん』の後押しがあったとはいえ、先日のライブは自分でも納得がいく出来だった。

 その成功体験が自信につながり、もともと堅実で丁寧さが評価されていたパフォーマンスに、華やかさが加わっていたのだ。何よりそれを自覚できているのが大きかった。


(早く次のイベントに出たいな……)

 猶予がどんどんなくなっているという世知辛い事情を抜きにしても、意欲は今までになく高まっていた。

 今の自分がどれだけやれるのか、あがり症は改善されたのか――先日の感覚を少しでも忘れないうちに、人前に立ちたかったというのもある。

 が、さらに。

(こんな気持ち、初めてかもしれない)

 気持ちの整理がついた今となっては、あのステージを思い返すのが日課のようになっていた。蘇る感情は、緊張よりも興奮だ。

(こういうのが、アイドルらしさの第一歩なのかも、なんて)

 ぼんやりとしていたアイドルへのあこがれが、具体的な体験を伴ったことで明確になった気がした。

 もっとたくさんの人にパフォーマンスを見せたい。照明と歓声を浴びて、笑顔と感動を生み出したい。

 そしてゆくゆくはアイドルとしてデビューし、佐藤心と再会する。

(あの日、共演できたから、あなたのおかげでアイドルになれた――そんな感謝を、直接伝えられたら。ううん、伝えてみせる)


 以前の美穂だったら、あがり症さえ軽くなればデビューできなかったとしても諦めがついたかもしれない。

 しかし、今は違った。

「私、アイドルになりたいっ」

 そう、はっきり言えた。


 ◇◆◇


 だが、彼女が待ち望んだ次のイベントは、予想外の形で目の前に迫っていた。




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