佐藤心「アホ毛?」小日向美穂「『ドリーミン・アーチ』ですっ」
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53:名無しNIPPER[saga sage]
2017/12/16(土) 23:04:17.66 ID:PMml/roUo

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 佐藤心のライブから一週間。


 美穂の頭で存在感を示していたアホ毛はすっかりしおれ、今はかろうじて根元あたりがふんわりとしているくらいだ。

 そして、あの日から『プロデューサーくん』の声も聞こえなくなっていた。

(やっぱりあれって、アホ毛の精霊……みたいなものだったのかな?)

 頼りにしていた頃は、不思議だとは思いつつもその恩恵にあずかっていたが、こうして今あらためて考えてみると、不気味だったのは間違いない。

 佐藤心は、このことも知っていたのだろうか。

 ……いや、そんなことはどうだってよかった。

 重要なのは、もう『ドリーミン・アーチ』を使ってはいけないということ。佐藤心に直接言われた、このことを信じていればいい。

 それを破れば、自分の意志で彼女の気持ちを裏切ることになるのだから。


 とは言っても、やはりいくらかの喪失感はあった。

 美穂が困った時、迷った時、何の見返りもなく手を貸してくれた『プロデューサーくん』に、だいぶ依存していたのかもしれない。

 でも、あの時――打ち上げの場で、佐藤心の忠告に対し沈黙していたということは、それが正解だからなのだろう、と美穂は解釈していた。

 ここが『プロデューサーくん』の引き際なのだ、と。


 たっぷりと時間をかけ、美穂の中でようやく気持ちの整理がついた。

 正直な話、佐藤心のあの表情を思い出すのが辛くて、まずまともに向き合うまでが長かったのだが。

 楽しかったライブのことを懸命に思い返したりして、どうにか精神状態をプラマイゼロの辺りまで引き上げることができたのだった。



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