52: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/13(水) 02:01:08.29 ID:VbrfxfJEo
===2.
さて――百合子をその場に一人残し、春閣下がどこへ向かったかと言えば
事務所からほど近い場所に存在するプロデューサーの家であった。
覚醒前の彼女ならば、その近辺は互いの関係がアイドルとプロデューサーであることを理由に立ち寄ることを
遠慮していたエリアでもある。(それは要らぬスキャンダル沙汰を起こさぬため、春香が自らに律した心ばかりの気遣いだ)
が、今の二人は肉塊を通した主従の関係で結ばれていた。
おまけに力も行使できる。二人を邪魔する障害など、取り除くのも容易いのだ。
そんな春香が「行く」と一言言ったならば、プロデューサーに断る権限は勿論無い。
実に一般的なそのマンションの、重たい玄関扉が今、厳かに開かれる。
「では春閣下様。幾分狭苦しい場所ではありますが――」
「は、はい! 大丈夫……お邪魔しまーす」
プロデューサーに促され、ちょっぴり緊張春香ちゃん。
強大なる悪の力に目覚めたとて心はまだまだ少女なのだ。
演じる余裕が無くなれば、途端、素の状態とも呼ぶことのできるいつもの彼女に逆戻り。
「お飲み物はコーヒーでも? ジュースの方がよろしければ、下で買って参りますが」
「あ、コーヒーで。……後、プロデューサーさん」
「はっ! なんでしょう」
「喋り方、いつも通りでいいですから……。その、今、私たち二人きり……ですし」
彼に通されたキッチン併設のダイニング。春香は落ち着かない様子でそう言うと、
ダイニングテーブルの上に置かれていた雑誌の表紙に目を落とす。
それは手軽に手に入る週刊雑誌の一つであり、
ちょうど彼女たち765プロのアイドルを特集している号だった
――表紙を飾る自分自身のグラビア写真と目が合って、
春香は何とも言えぬ気恥ずかしさから雑誌を慌てて裏返す。
103Res/100.38 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20