39: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/12(火) 12:11:38.47 ID:UZlyT6fxo
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プロデューサーが事務所を静かに出ていくと、春香は念のため扉に鍵をかけた――カチャリ、とステンレスが軋んだ音がする。
些細だが、疎かにはできぬ用心を終えると彼女は改めて百合子に声かける。
「先にも話した通りだが……百合子よ、お前の体には余の分身たる肉の塊が入り込み、
それは臓器と一体となって失われた生命活動を維持しておる」
すると百合子は自身の側頭部から飛び出している飛膜を指で弄くりながら。
「一体になってるってことは、この頭から生えてる羽なんかも――」
「そう、今や体の一部じゃな」
「うぅ、やっぱりドッキリなんかじゃないんですね……」
「しかし使い方を覚えれば便利な物よ。ただ精神を落ち着かせて想像してみるだけでよい……
その色も、形も、大きさも、ある程度なら自在に変化させることすらできようて」
たった今春香から聞いた通り、百合子は精神を落ち着けてみようと目を閉じた。
周りの音から意識を背け、新たに感じる"第二の手"とも言える部分に集中する……が、しかし。
「……あ、ぅぅ……ダメです、集中できません〜」
情けない声を上げながら、百合子がふるふると首を振った。
そうして彼女は目を開けると、「で、あろうな」とワケ知り顔で頷く春香に教えを乞うような視線を送る。
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