101: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/17(日) 15:08:51.68 ID:Pl2TdVwXo
「随分急いだ様子ですね。……時間は、まだ三十分も余裕なのに」
「そう言う志保ちゃんだって、今ココに私といるじゃない」
言って、高山紗代子は走ったことでズレた眼鏡をかけ直した。
彼女も目の前の志保同様に旅行鞄を手に持って、肩には釣り竿用の細長いバッグを担いでる。
また、それに合わせるように服装は半袖の開襟シャツに膝の少し上までの丈のズボンという出で立ち。
普段から履き込んでいる運動用のスニーカーも含めて動きやすさ重視のスタイルだ。
ちなみに志保はボーダーのシャツにフリルスカート。
羽織っているジップアップの半袖黒パーカーは被ると猫耳が「こんにちわ」するフード付きで、
着用者のクールな見た目に似合わず実に可愛らしい一品。
さらに、腰にはお気に入りの黒猫キーホルダーもぶら下がっている。
「もしかして、紗代子さんもみんなに急かされてます?」
「百合子からのメールのことなら……うん、来たよ」
苦笑する紗代子の答えを聞き、志保が同情の視線を彼女に向ける。
いや、正確には仲間を見つけて喜んでいると言うべきか。
「ホントに、ね。……百合子は人を振り回してくれるんだから」
「同感ですね。あの人たちにはいつも困らされます」
到着したエレベーターに二人で乗り込みつつ、微笑みを浮かべて紗代子が言う。
……が、しかし。彼女にやれやれと返事を返す志保は気づかなかった。
二人の乗ったエレベーター。その閉じ行く扉の隙間に向けられた、
紗代子の瞳はゾッとするほど冷たかったということに――。
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