モバP「藤原肇とおちょこがふたつ」
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23:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 21:01:31.86 ID:n8reEq6Z0

風は無風。ときおり暖かい微風が頬をなでる程度。
りーりーとなにかの虫の鳴き声がする。なんて虫でしょうねと二人語り合う。

俺は太郎坊を持ち上げた。手酌で熱燗を入れようとする。
肇は何も言わずに腕を差しだし、俺の手からとっくりをひったくった。

「ふふっ、私がお酌しますっ」

たまに肇はこういういたずらっぽい顔をする。
こんな表情が見られるのも岡山にいる特権である。移住を薦める。

彼女がお酌をする。とくとくと太郎坊がいっぱいになる。スミレの花が浮かび上がった。
俺もお返しにと酌をする。今度は次郎坊がいっぱいになり、またスミレの花が咲いた。

花言葉は「謙虚」だの「小さな幸せ」だの「誠実」だのと出てくる。
でも俺は多分、「小さな幸せ」が最有力候補であると思う。

俺たちは二人乾杯をした。かちんという音ともに水面がゆらりと揺れる。
スミレが見える。空は満月が照らす。隣には肇がいる。

俺たちは沈黙する。

黙ることで、言葉にするよりもいっそう多くのことを話し合うために。
黙ることで、言葉にするよりもいっそう多くのことを理解するために。

彼女はまた微笑んだ。

「……"二人"は、なんて言っていますかね」

どうせこいつらのことだ。まだ満足しちゃいないんだろう。


「早く、弟子がほしいなあ」


わがままな、やつらだよ。









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