94: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/23(火) 18:34:34.28 ID:khssAnhaO
やっと三度目の便所巡りを終えた。
肥溜めの蓋を閉め、回収に使った桶と壺を洗い、便所掃除の一日は終わる。太陽は山の端に差しかかっていた。橙色の光に染まる街を、便所掃除はぶらぶらと歩く。
行き先は丘の上にある兵舎だ。厳密に言うならば、丘の上にある兵舎の傍にある幕舎。
あまりに身体が臭かったせいか、兵舎に入ることすらできなかった。とはいえ名簿上は騎馬隊の一人なので、兵舎の隣に小さめの幕舎を張り、そこで暮らしているのだ。
便所掃除「あー肩がいてー。明日も頑張らねーとなぁ……」
ここは風雨を凌げるし、個室なので人の目を気にせず、のんびり過ごせる。だが、ひどく惨めだった。幕舎は目立つので、時おり騎馬兵がからかいに訪れる。ろくに訓練もせず、毛並みの良さだけで騎馬隊に入隊した、兵士の風上にも置けない者たち。
便所掃除「俺はあいつらとは違う。違うんだ。いつかこんな仕事ともオサラバして、戦場で槍を振るってやるんだ」
便所掃除は槍を手に取ると、幕舎の外に出た。
兵舎の二階から、がやがや笑い声が聞こえた。
辺りの静けさが、一層濃くなった気がした。
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