62: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/08(月) 23:54:07.82 ID:EImb6bLy0
先代勇者「なッ……!」
箱に刻まれた黒い羊の紋章を目にした途端、先代勇者は力が抜けたようにへたり込み、両手で頭を抱えた。
先代勇者「こんな大事な時に……何故だ、軍師! やめてくれ……やめてくれ……! もうやめてくれ……!」
側近「ガンジャですな。大麻の花を乾燥させたものです」
さらにダメ押しで、間諜から預かったヘッドフォンを取り出す。
闇商人『誰にも尾けられなかったですか?』
先代勇者『ああ。それに宝物庫は完全な防音仕様だ。間違っても我らの会話が外に漏れることはない』
闇商人『二箱分でよろしいですね。ヒヒッ』
先代勇者『十分だ。金貨5000枚だったな? ここにある。持っていくがいい』
軍師「この太った男は、民から巻き上げた税を自らの贅沢に使うのみならず、国で禁じられている麻薬取引にまで回していたのです」
聴衆がざわめきだす。バルフの民にとって、先代勇者は英雄だった。
親は正義の象徴として子に語り、詩人は光の象徴として歌い、貴族は頼れる友人として持ち上げたものだ。
「……裏切り者が! 金返せ!」
「重労働で夫が死んだ。あんたに殺されたようなもんだよ」
「町が賑わってるからって、呑気していたのか! 豚野郎!」
「テメェの仕打ち、墓場まで持っていってやるよ」
先代勇者「ぐうッ……どうして、こんなことに……」
国王「とんだ一日になったのう、バルフ候。最後の最後にやらかしてくれたな。一応、弁明を聞いておこうか」
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