53: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/02(火) 20:54:11.50 ID:MhAvF7XnO
間諜「ガンジャ? あー、麻薬ですね。それ」
翌朝、事情を聞いた間諜は即答した。麻の花弁を乾燥させて作った麻薬を、ガンジャと呼ぶのだという。魔王を倒した先代勇者が、大麻の違法取引に手を染めている。
軍師「知りたくなかった。バルフ候は今までずっと、私を裏切っていたのだな」
間諜「軍師さん……」
軍師「私だけではない。バルフの町そのものを、陛下の懇意までも裏切っていた!」
拳で卓を思い切り殴りつけた。拭けども拭けども、目から涙が溢れ出す。自分が敬っていた先代勇者は、ちょっと世間知らずでも、町民想いの優しい英雄だった。
数年で、人はこうも変わるものなのか。
軍師「こんな体たらくでは、辞めていった仲間に申し訳が立たん……」
間諜「仕える主君を誤ったのです。本当に、気の毒だと思います」
軍師「そうだ。私は主君を選ぶ能力が無かった。よりによって、大麻に手を出す太ったババを引いてしまうとはな……」
間諜「あなたには道が二つ残されています。来週、アルマリク王のバルフ視察会がありますよね。そこで麻薬取引の件を暴露するか」
間諜「このまま目を瞑り、偽りの主君と共に滅びゆくか。どちらかです」
軍師「暴露するのは勇気がいる。場合によっては、私も捕縛されるやもしれん」
間諜「では、目を瞑るのですね? 遅かれ早かれ、バルフの主君は代替わりします。必ず。その時、あなたは先代勇者と一緒に罪人として首を斬られてしまうのですよ」
間諜「運命の分岐点です。先代勇者と共に死ぬか、私達と共に新たな世界を作るか」
軍師「薬師……お前、何者だ?」
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