46: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/29(金) 19:52:28.78 ID:sOpPte4i0
薬師が入ってきた。今日は茶色の髪を横に流している。
彼女は会うたびに、髪型を変えていた。
髪型の話から、自然と政治や地理の話に盛り上がっていくのだ。
間諜「軍師さん、顔色が悪いですよ。過度な労働はかえって効率が悪くなると、以前申し上げたはずですけど……」
軍師「違う。仕事量は減らした。別件で頭を悩ませている」
間諜「別件……と言いますと?」
軍師「先代勇者殿が夜な夜な、どこかへ出かけているようなのだよ」
間諜「どこかへ?」
軍師「うむ。宝物庫の方へ歩いていく姿を、昨夜見かけた。しきりに辺りを見渡して、注意を払っているようであったが」
間諜「御主人が何をなさっているか、知りたいのですか?」
軍師「町の将来に関わることだ。知りたいと思わぬ方がおかしい」
間諜「でしたら、私の補聴器をお使い下さい。壁の向こう側の物音まで聞き分けられる魔道具です。きっとお役に立つと思います」
薬師はヘッドフォンを外すと、卓の上に置いた。
怪訝な表情で声をかける軍師。薬師は彼の唇に人差し指を当て、パチリとウィンクしてみせた。
まるで『私は大丈夫です』とでも言うかのように。
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