34: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/20(水) 17:50:06.06 ID:zPAwmRea0
間諜「感染症で耳と聴力を失いまして。魔道具がなければ、まったく無音の世界なのです」
間諜がヘッドフォンを取り、耳のあった場所を指差した。
真っ赤に爛れている。軍師は顔を背け、呻くように言った。
軍師「すまない、悪いことを聞いたようだったな。許してくれ」
ズキリ。
再び、内側から金槌を打ち付けられたような衝撃。
軍師「ウッ……」
間諜「頭が痛むのですか?」
軍師「右は何ともないが、左側が脈打つように痛む。見ての通り、仕事すらままならんくらいだ」
間諜「他に症状はございますか?」
軍師「吐き気がする……それに眩暈も。薬師、私の病は薬で治るものなのだろうな?」
間諜「ええ。時間はかかりますけど漢方で治りますよ。明日、お持ちしますね」
軍師「薬師。私はお前に二度、失礼を働いてしまった」
間諜「失礼?」
軍師「一つは魔道具について余計な詮索をしたこと。もう一つは最初、心の中でお前を軽蔑してしまったことだ」
間諜「いえいえ、この恰好じゃ驚かれるのも無理ありません。こちらこそ、軍師様に失礼を……申し訳ございませんでした」
間諜が退室した後、軍師はベッドに仰向けに転がった。
あれは本物の薬師なのか、それとも自分を暗殺しようとするアサシンなのか。
考えれば考えるほど、頭の痛みが激しくなってくる。
目を閉じ、大きく息を吐いた。
意識が暗闇に溶けるまで、そう時はかからなかった。
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