勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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252: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/08/19(日) 11:00:08.74 ID:JbrWqG6U0
先頭を歩く褐色の女が、ふと立ち止まった。

女盗賊「これが鉄門。街道の名前の由来にもなってる門さ。あんたら、鉄門目指して来たんだろ? 目ェかっぽじってよく見とくんだね」

目をかっぽじったら、見えなくなるのではないか。
そんな野暮な突っ込みは許されない。しかし、どうしても気になる点がある。

勇者「そもそもさ、何もないんだけど」

灰褐色の隘路が、どこまでも続いているのみ。

女盗賊「もっと近づいてみな」

言われるがまま近づいてみると、硬い岩のようなものが爪先にぶつかった。
赤茶色に風化した鉄が、あちらこちらに散らばっている。
女盗賊の伝えたいことが、分かったような気がした。

勇者「これ、ひょっとして掛け金だろう。掛け金が砕けて散らばっているんだ。だから、ここに門があった。鉄の門があったんだ」

女盗賊「正解。掛け金だけじゃなく蝶番もある。魔族と人間の大戦で、ぶっ壊されちまったみたいでさ」

勇者「立派な門だったんだろうな」

女盗賊「ったく、どうして魔族なんかが攻めてきたのかねぇ」

ここで、魔女が静かに口を開いた。

魔女「少し、過去の話をしよう」

魔女「元々、鉄門街道は誰の物でもなかった。人間族、精霊族、魔族。三つの種族が領有権を主張し合う、衢地だったのさ」

勇者「こんな緑のない痩せた土地を、どうして奪い合っていたんだ? 稀少な鉱石でも採れたのか?」

魔女「北の土地は比較的痩せているからね。外敵の襲撃を受けにくい交通路を確保して、南の土地へ進出する足掛かりにしたかったんだと思うよ」

考え抜いた人間族の王は、エルフ族の精霊王にサマルカンドへの永久不可侵と鉄門街道の共同統治を約束し、やっと交通路を手に入れたのである。
北のサマルカンドと南のバルフが繋がったことで、都市間の交易が盛んになり、王国の懐もずっと豊かになった。

無論、仲間外れにされた魔族が黙っているはずがない。
魔王は檄文を書き、人間族と精霊族を地上から消し去るべく討伐の旗を揚げたのであった。

勇者「人間が魔族を滅ぼしたと思ったら、今度は人間同士で紛争が起ころうとしている。同じことの繰り返しだ」

魔女「いつの世も、どこの世界でもそうだよ。欲望から争いは生まれる。キミも妹さんを守りたいという欲があるだろう?」

魔女「そういえば、妹さんから小説を託されてね。キミはあまり字が読めないようだから、読み聞かせてあげる」

勇者「妹の、小説?」

魔女「まぁ、そんなに長くないから楽にして聞いてくれ給え」




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