勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
1- 20
235: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/07/14(土) 23:32:45.48 ID:5bdkGI0Z0
国王は玉座から立ち上がると、庭園へ歩いていった。
数人の侍女がいそいそと後をついていく。今日は日が照っている。
日傘をさしたり、巨大な団扇で扇いだりするのだろう。

国王「勇者軍は次に何をすると思う」

勇者軍というより軍師だが、と国王は付け加えた。
彼は軍師の能力と忠誠を高く評価していた。
だからこそ、先代勇者と共にバルフの統治を任せたのだ。
バルフを第二の王都とするつもりで。

側近「物流の管理、法整備、兵力の増強、様々ございますが、いずれ新たな拠点を築くでしょう。それも、王権の及ばぬ場所にです」

国王「王権の及ばぬ場所、か……」

エルフ族の治めるサマルカンドとドワーフ族の棲むカーブル。
最初に思い浮かんだのはその二都市だ。
国王は考えた。自分が軍師なら。
南方のカーブルよりも、アムダリヤ川でバルフと結ばれたサマルカンドを自軍の領土としたいはずだ。
肚は決まった。

国王「勇者軍より先に、サマルカンドを手中に収める」

側近「精霊王が容易に町を明け渡すとは思えませぬが」

国王「ジザフの地方軍は優れた将が多く揃っていたろう。早急にエルフ討伐軍を編成し、サマルカンドを攻め陥とせ」

側近は瞬時に悟った。騎士、戦士、剣士のことを言っているのだ。
勇者軍を牽制しながら、新たな領地まで得ようとしている。
それも酒の上の妄言ではなく、本気でサマルカンド占領を目論んでいるのだ。

側近「で、ですがエルフ族には、先の大戦で援軍を出してもらった大恩がございます。恩を仇で返すのは人道に反する行為ではないかと……」

国王「人道が何だと言うのだ。やれ。余の命が聞けぬか」

側近「……かしこまりました。軍部にそのように伝えておきます」

白騎士の精鋭部隊を以てしても、中々崩せない堅陣を敷く騎士。
勇者パーティーのひとりとして魔王討伐を達成した戦士。
そして統率力では王国軍随一の剣士。

この3人が集まれば、なるほどエルフの町など簡単に呑み込んでしまうだろう。
しかし、側近には漠然とした不安があった。
完璧な計画。その中に生まれた、ほんの小さなほつれ。
その小さなほつれが、いずれ破滅的な失敗を引き起こすのである。

側近「私が陛下の味方をしなくて、誰がするというのだ」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
256Res/223.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice