230: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/07/03(火) 00:50:54.46 ID:nZ+RnUe20
次から次へと、報告書が軍師の卓に積まれていく。
灌漑用のため池や用水路の不足が大半だった。
大唐国が亀茲城に兵を集めていることも報告されている。
大唐国の存在は、軍師にとって悩みの種のひとつだ。
彼らは王国と同盟関係にある。
数年前には、将軍・高仙芝が自軍を率いて小勃律国を打ち破った。
剣のごとく鋭い、峻険な山々を大軍で越えたのだから驚きだ。
もし今バルフが高仙芝に攻め込まれれば、確実に陥とされてしまう。
軍師「間諜がいたら大分楽だったろう」
彼は天井を見上げながら、ポツリと呟いた。
軍師「あの女、性格はともかく能力は優秀だった」
間諜の横顔が軍師の脳裏に浮かぶ。
優しく微笑んだ間諜。
心配そうな眼差しを向ける間諜。
怒ったように頬を膨らませる間諜。
人差し指を唇に当て、ウィンクした間諜。
軍師「仕事中に考えることではないな」
一度だけ、廷臣との会議中に頭痛で倒れたことがある。
その時、間諜は素早く駆け寄り、軍師を書斎まで運んでくれた。
彼女の肌は、絹のようにきめ細かく滑らかだった。
乳房も大きい。
服の上からでも、柔らかく潰れているのをはっきりと感じ取れた。
軍師「だから、何を考えているのだ。私は」
軍師とて人の子。
何日も狭い部屋の中で膨大な報告書と向き合っていれば、おかしくなってしまうのも無理もない。
そう、思うことにした。軍師は溜息を吐いて椅子から立つと、寝台に倒れ込んだ。
軍師「間諜を、抱いてやる」
言った直後、彼は毛布に顔を埋めて悶絶した。
35にもなって、まだ思春期が抜け切れていないのか。
女と縁がないことなど、誰よりも自分が分かっているはずなのに。
軍師「私は軍師失格だ。女に心を乱されるなど、あってはならないことだ。だが……クッ……」
勇者と話す間諜を見るたび、胸が引き裂かれるように痛む。
痛んだ心を奥底にしまい込み、再び軍師は卓に向かい、筆を執った。
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