228: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/11(月) 23:50:05.17 ID:VfWAULhF0
闇商人は盗賊の砦で『教育』を受けた後、大富豪の屋敷へ送られることとなった。
能力のある者ならば、たとえ仇敵だろうと手を差し伸べる。
盗賊の心は溶岩のように煮え滾っているだろう。
しかし、私情よりも利を選んだ。
立派な男だ。
盗賊「家内の麻薬中毒を治すことはできるか?」
魔女は静かにかぶりを振った。
魔女「たとえ僧侶の回復魔法をもってしても、委縮した脳は治せない。キミの奥さんを元に戻すこともできない」
盗賊「……」
ちら、と妻を一瞥する。
盗賊の妻「あう……あう……」
彼女は涙をこぼしていた。
痩せ細った手で、首にかけたペンダントを強く、握りしめながら。
そのペンダントは盗賊が若い頃、初めて妻に贈ったプレゼントだった。
盗賊は目を閉じると、天を仰ぎ深いため息を漏らした。
盗賊「俺の方こそ、どうしようもない悪党だ」
黄昏色に染まる麦畑。
いくつか細長く伸びる影法師。
ひとつ、またひとつと消え、最後には誰もいなくなった。
盗賊が勇者軍鉄門砦総司令となるのは、まだ後の話。
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