221: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/06(水) 16:44:00.31 ID:YxEXL6rxO
盗賊「大当たりだ、魔女さんよ。俺達ハザラ族は、力のある騎馬民族でも交渉技術に長けた商業民族でもなかった」
盗賊「周囲の外敵に怯えながら小さな畑を耕す、泥臭い農耕民族だったんだ」
盗賊「金もねェ、人もねェ、住む場所もねェ。それでも、なんとか貧しいなりにやりくりできていた。瀬戸際の所でな」
盗賊「ご先祖様から受け継いだ、ハザラ族の高潔な魂があったからだ。たとえ弱小な民族でも、鉄門街道を守護してきた。そのちっぽけながらも強く光り輝く魂があったからだ」
上手くいっていた。
あの男、闇商人がハザラ族の集落を訪れるまでは。
闇商人は初め、美味い酒や北の湖で獲れた新鮮な魚を無料で村人に提供した。ハザラの民は神が聖人を遣わしたものだと思い込み、飲めや歌えやの大騒ぎ。その呆れるほどの純粋さが、闇商人につけ込む隙を与えたのだ。
盗賊「闇商人は自分の農園で働かないか、と話を持ちかけた」
盗賊「野菜を栽培し、収穫する。それさえすれば、誰にも奪われない豊かな土地を貸し与えると。夢のような話だった」
勇者「あんたは、闇商人について行かなかったのか?」
盗賊「もちろん、俺は反対したよ。明らかに怪しい臭いがする。無条件で多くの人間に土地を貸す阿呆など、いるはずないからな」
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