199: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:20:02.16 ID:QmyZmny70
急な螺旋階段を上り、三階の客室に案内された。
がらんとした殺風景な部屋に、寝具と思しき毛布が二つ敷いてある。
奥の壁には、四角い小窓がひとつ。
窓と言っても穴を開けただけなので、冷たい風はもちろん吹き込むし、雨の日に立てば身体が濡れてしまう。
200: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:20:52.18 ID:QmyZmny70
宿屋の主人「今日は良い風が吹いている。お前ら、オラの合図に合わせるんだぞ」
三人は牛に踏まれた麦の山を囲んで立った。
俄かに、木々がざわざわと揺れはじめた。砂塵が舞い上がる。川面が波打つ。
ごう、と一際強い風が吹き荒れた。その時だった。
201:名無しNIPPER[sage]
2018/05/11(金) 01:41:35.77 ID:YgGgMHCDO
乙
待ってた
202: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/12(土) 19:29:28.05 ID:Qg3um/TT0
宿屋の主人「このくらいで良いだろう。おめぇら、休んでいいぞ。オラは他の仕事がある。陽が沈んだら帰る」
二人が去った後、主人はその場にしゃがみ込んで選別した麦の状態を見た。
本当に良質な麦か確かめるためだ。すると、麦山の奥から姿を表した影がある。
蒼い絹服に身を包んだ上級官員だ。
203: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 00:34:12.44 ID:hJN7I0W/0
隊商宿を出て麦山を横目に少し歩くと、卵型の大きな建物が見えた。
外壁も床も、なんとすべすべした大理石でできている。
ハザラ族が建てたものとは、到底思えない。
しかし、勇者は首を横に振る。
204:名無しNIPPER[sage]
2018/05/15(火) 02:19:33.72 ID:eNSzG1cDO
乙
205: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:24:06.67 ID:hJN7I0W/0
しばらく二人は無言で焼石から立ち上る蒸気を眺めた。
勇者「……間諜が命懸けで道を切り開いているのに、俺達だけサウナでのんびりしていいのかな」
魔女「平和だよね、この村」
206: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:27:32.93 ID:hJN7I0W/0
勇者「俺達の他に? まさか、変なこと言うなよ」
魔女「キミ、そんな隅にいて寂しくないかい。ボク達のところへ来てくれないか。ハザラ族の民謡に興味があるんだ」
返事はなかった。物が動く気配すら感じられない。
207:名無しNIPPER[sage]
2018/05/16(水) 00:32:52.53 ID:hkyQ6MQDO
乙
208: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/18(金) 23:27:15.26 ID:w/kGJFk40
その日の夜は、宿屋の主人と当たり障りのないことを話して終わった。
大道芸人になった経緯や、カーブルでドワーフ族に披露した芸についてだ。
一応、この村では大道芸人として通っている。
勇者であることが宿屋の主人に知れたら、こちらの動きが最悪の場合、国王にまで知られてしまう。
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