184: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/20(金) 01:30:16.35 ID:P0ewiKag0
陽が沈み辺りが薄暗くなった頃、軍師と便所掃除はそれぞれの持ち場へ帰っていった。
自分の他に誰もいないせいか、家の中が随分と広く見える。
通りに響き渡る喧騒は、未だ絶えそうにない。
眠るのには些か不便しそうだが、町が賑やかなのは良いことである。
賑やかな分だけ物が流れ、金が動く。町全体が肥えていく。
先代勇者が暴政を行っていた頃は、どこか鬱屈とした暗い雰囲気が漂っていた。
今は違う。
皆が皆、新たな勇者の下に一致団結し、自分の生活をさらに良くしようと努力している。
勇者「やっと俺も、勇者軍に貢献できる場を手に入れた」
そう考えると、嫌な気はしない。
大富豪の屋敷では、妹が夜を徹して校正の嵐と向き合っている。
軽い調子のある間諜も、部下を育て暗躍の真っ最中だ。
自分だけ楽をするなど、落ち着かなかった。
間諜「こんばんはーッ!」
勇者「わッ!」
窓の外から、ニュッと首が突き出してきた。
茶色の髪に魔道具・ヘッドフォンを着けた少女。間諜だ。
床に転げ落ちた勇者を見て、クスクス笑っている。
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