177: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 23:00:44.51 ID:9B6rFOCH0
勇者の家。枕元に、二人の男が座っている。
一人は羽扇を片手に携えた童顔の小男。
一人は鎖帷子を着込んだ、若く精悍な将校である。
童顔の男が呆れたように呟いた。
軍師「戦争が終わった矢先、熱を出す勇者がどこにいる」
便所掃除「勘弁してやれよ。軍人の俺でも完全な殲滅には苦労したんだ。こいつは軍の訓練を受けていない町人なんだろ? 生きて帰ってこれただけでも、御の字さ」
テルメズとの戦から三日。
死体処理や牧草地の洗浄はあらかた済んだ。
疫病を防ぐため血や糞のついた武具はアムダリヤ川で洗い、新たな侵攻に備えて防塁の再建も始まっている。
便所掃除の奮戦が噂となって広まり、近隣の村々から勇者軍に入りたいと志願する若者も増えた。
特にマザーリシャリーフなどは村人全員が尻に火が点いたかのごとく、訓練に励んでいるという。
すべてが変わりつつあった。
勇者「軍師、便所掃除、見舞いに来てくれたのか」
軍師が羽扇で勇者の額を叩く。
軍師「来てくれたのか、じゃあない。これからの方向性を決める大事な会議を開きたいのに、貴様がいなければ始まらんではないか」
勇者「そ、それはすまん」
便所掃除「待ちきれなくて、今から三人で会議を始めるんだとさ」
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