158: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/03/12(月) 17:43:54.81 ID:EIDsY1AH0
白騎士「陛下へのお手紙ですかな」
王子「白騎士殿」
白騎士「探しましたぞ、王子。共に宮殿へ帰りましょう」
純白の甲冑を着込んだ、初老の男が傍に立っていた。
万の騎馬軍を率いる、王国軍きっての名将・白騎士である。
忠義に篤く実直な性格が評価され、王子の教育役を任されていた。
王子「今日という今日は絶対に帰らないよ。たとえ、白騎士殿が相手でもね。僕の決心は固いんだ」
白騎士「なぜそこまで宮殿の外に出たがるのです」
王子「なぜって……知りたいから。どうして世界はこんなにも美しいのに、人はいがみあうのか。身分の差で苦しまなければならない人がいるのか。知りたかったから」
白騎士「世の中は殿下が思い描くほど、美しくはないのですぞ」
王子は口をとがらせた。
王子「だから、こうやって現地調査しているんだろ。貧しい人の生活を観察して、どこが不満なのか具体的に書き出してみるんだ」
白騎士「表面から見るだけでは、分からないこともあります」
王子「うるさいな。いっつも口を出してきて。白騎士殿は僕の親じゃないでしょ。ちょっとくらい好きにさせておくれよ、宮殿は息苦しくってしかたないんだよ。毎日毎日、母上から礼儀作法を叩きこまれてさぁ」
白騎士「……陛下がバルフの遠征から帰還したそうです」
王子「えッ」
王子は目を丸くしたまま、その場に固まった。
もう帰って来たというのか。
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